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後藤明生コレクション〈1〉前期〈1〉

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  • サイズ B6判/ページ数 440p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784336060518
  • NDC分類 918.68
  • Cコード C0393

出版社内容情報

「内向の世代」の旗手・後藤明生。その粒ぞろいの作品から、後藤と縁の深い編集委員たちがセレクトした選りすぐりの作品を集大成。雑誌出版界にうごめく人間たちの、徐々に入り組み複雑に錯綜してゆくさまざまな関係を、婦人雑誌の女性編集者の視点から、苦いユーモアと軽妙な筆致を交えて描き、文藝賞〈中短篇部門〉佳作となった「関係」。気鋭のファッションデザイナーが主催するワイルド・パーティに潜入取材を試みた週刊誌のゴーストライターが目にしたマスコミ業界で翻弄される関係者たちの浮薄で空虚な姿。お互いが笑い、笑われる非情な関係の中で織りなされるグロテスクな悲喜劇のうちに自らの存在証明を見出す人間を洒脱な筆で描いた「笑い地獄」。同じアパートの隣室に住む独身女性のため、密かに自動式自慰機械の開発に没頭する無名の画家。製作開始から三カ月、あとは「偉大なる人工性器」が入手できればそれは完成する……宙吊り状態にある男の、内なる疎外からの脱出を目指す、奇行ともいうべき戦いを笑いの含蓄を込めて描いた「ある戦いの記録」ほか、粒ぞろいの初期秀作8作を収録。月報=蓮實重彦・福永信・滝口悠生

関係
無名中尉の息子
S温泉からの報告
階段
笑い地獄
パンのみに非ず
ああ胸が痛い
ある戦いの記録
「楕円原理」の弾み(渡部直己)

後藤明生[ ゴトウメイセイ ]
1932年、旧朝鮮咸鏡南道永興郡永興邑(現在の朝鮮民主主義人民共和国)で生まれる。1946年、38度線を越境、福岡県に引き揚げる。1953年、早稲田大学露文科入学。1955年、「赤と黒の記憶」が第4回全国学生小説コンクール入選。大学卒業後、博報堂を経て平凡出版(現マガジンハウス)入社。1962年、「関係」が第1回文芸賞中短篇部門の佳作となる。1968年、平凡出版を退社し、小説家専業に。1989年、近畿大学文芸学部教授、1993年に学部長となる。1977年に『夢かたり』で平林たい子文学賞、1981年に『吉野大夫』で谷崎潤一郎賞、1982年に『笑いの方法―あるいはニコライ・ゴーゴリ』で池田健太郎賞、1990年に『首塚の上のアドバルーン』で芸術選奨文部大臣賞を受賞。

いとうせいこう[イトウセイコウ ]
作家・クリエイター。1961年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、出版社の編集を経て、音楽や舞台、テレビなどの分野でも活躍。1988年『ノーライフキング』で作家デビュー。1999年『ボタニカル・ライフ』で第15回講談社エッセイ賞、2013年『想像ラジオ』で第35回野間文芸新人賞、第2回静岡書店大賞(小説部門)を受賞。

奥泉光[オクイズミヒカル]
1956年山形県生まれ。国際基督教大学教養学部人文科学科卒業。同大学院博士前期課程修了。1986年、すばる文学賞の最終候補作『地の鳥 天の魚群』を「すばる」に発表しデビュー。主な著作に『ノヴァーリスの引用』(第15回野間文芸新人賞)、『石の来歴』(表題作で第110回芥川龍之介賞)、『神器―軍艦「橿原」殺人事件』(第62回野間文芸賞)、『東京自叙伝』(第50回谷崎潤一郎賞)などがある。

島田雅彦[ シマダマサヒコ ]
1961年東京都生まれ、川崎育ち。東京外国語大学ロシア語学科在学中の1983年『優しいサヨクのための嬉遊曲』が芥川賞候補となり、作家デビュー。1984年『夢遊王国のための音楽』で野間文芸新人賞、1992年『彼岸先生』で泉鏡花文学賞、2006年『退廃姉妹』で伊藤整文学賞、2008年『カオスの娘』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。2010年下半期より芥川賞選考委員を務める。現在、法政大学国際文化学部教授。

渡部直己[ ワタナベナオミ ]
1952年東京都生まれ。現在、早稲田大学文学学術院教授。主な著書に、『中上健次論』、『不敬文学論序説』、『日本小説技術史』などがある。

内容説明

気鋭のファッション・デザイナーが主催するワイルド・パーティに潜入取材を試みた週刊誌のゴースト・ライターが目にしたマスコミ業界で翻弄される関係者たちの浮薄で空虚な姿。お互いが笑い、笑われる非情な関係の中で織りなされるグロテスクな悲喜劇のうちに自らの存在証明を見出す人間を洒脱な筆で描いた「笑い地獄」。同じアパートの隣室に住む独身女性のため、密かに自動式自慰機械の開発に没頭する無名の画家の、内なる疎外からの脱出を目指す、奇行ともいうべき戦いを笑いの含蓄で描いた「ある戦いの記録」ほか、粒ぞろいの初期秀作8作を収録。

著者等紹介

後藤明生[ゴトウメイセイ]
1932‐1999。旧朝鮮咸鏡南道永興郡永興邑(現在の朝鮮民主主義人民共和国)で生まれる。1946年、三十八度線を越境、福岡県に引き揚げる。1953年、早稲田大学露文科入学。1955年、「赤と黒の記憶」が第四回全国学生小説コンクール入選。大学卒業後、博報堂を経て平凡出版(現マガジンハウス)入社。1962年、「関係」が第一回文藝賞中短篇部門の佳作となる。1968年、平凡出版を退社し、小説家専業に。1989年、近畿大学文芸学部教授、1993年に学部長となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

かわうそ

27
やっぱり後藤明生はめちゃくちゃ面白い。飄々と人を煙に巻くような文体で本筋からの脱線を繰り返しているかと思いきやいつの間にか大きく回り道をして元の話に戻っているみたいな構成がほんとに好き。このコレクションはあまり急がずゆっくり楽しもうと思っていたのですが、はやくも次が読みたくなってきた…2018/03/24

踊る猫

15
一体なんなんだろう。タイトルから予想していたようなストーリー展開が読めない。予想もつかない展開、デタラメでそれでいて綺麗に繋がっているストーリー、軽妙な語り口……どうでも良い微細な部分をこれでもかというほど丹念に記述し、綿密に記録して行くその術はカフカやベケットのようでもあるし、そうでもなさそうだ。落語がベースとなっているという点では町田康氏にも通じそうな気もするが気のせいかもしれない。兎に角ワケが分からない。読んでいて予想もつかないスジの展開で脳が疲れてしまうのだけれど、不思議と読み応えあり。シュール!2017/04/05

amanon

7
何とも言えず感想が述べにくい作品集というべきか。巻末の解説で、著者の作風の一端が理解できた気はしたが、それでも更なる深読みが必要であることを痛感。冒頭に収められた「関係」では、数十頁程の短編であるのにも関わらず、多数の登場人物が出てくるのに面食らった。そして、いくつかの連作と言っていい私小説風作品群で、度々主人公の疾患が描かれているのに、創作の世界でありがらも、「この人本当に大丈夫か?」とつい心配してしまったほど(苦笑)。そして何より度肝を抜かれたのが、「ある戦いの記録」。こんな作品も書いてたとは。2024/05/30

フリウリ

6
「後藤明生コレクション」4、3を読み、2、1に進むつもりで2冊を手にしたものの、ふと1を読み始め、終えてしまった。「ああ胸が痛い」では、武田泰淳の「司馬遷」からの引用がある。解説によると、後藤明生は「司馬遷」を読んで「楕円ヴィジョン」「楕円原理」なるものを体得し、世界や人生を見る目が一変したのだという。中心が必ず2つあるという楕円の「二者関係」という関係性を原理的に適応して、世界や人生を理解するということのようだが、人間関係への異様ともいえるこだわりの背後にあるものが、わかったような気がした。82023/03/18

ハイザワ

4
後藤明生的な「わたし」の立ち位置というものがあるのかもしれない。『笑い地獄』で書かれたような「仮装」、その場にはいるけれど参加していないという立ち位置は、『関係』や『パンのみに非ず』のような作品、さらには男が言葉を発さない団地という環境の中にも現れていると思う。当然それは行き当たりばったりな語りと無関係ではない。一つ一つの出来事は詳しく書かれているはずなのに、それがあらぬ方向に向かっていくにつれて、テクストの中に、冷笑的ではない形で規範から距離を取った「わたし」が潜り込むだけの隙間が生まれるのだろうか。2017/09/11

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