出版社内容情報
鏡花の絢爛華麗な幻想美と、ノスタルジー溢れる和ポップ絵が渾然一体となった文芸絵草紙。
鏡花の絢爛華麗な幻想美と、ノスタルジー溢れる和ポップ絵が渾然一体となった文芸絵草紙。朱文字で書かれた日記、少年が握る紅いグミの実、魔人の羽織る赤合羽、城下を焼きつくす紅蓮の炎。あやかしの色彩が乱舞する幻想世界。
【著者紹介】
1873-1939年。小説家。代表作に「高野聖」「草迷宮」「歌行燈」ほか。
内容説明
朱文字で書かれた日記、少年が握る紅いグミの実、異界の魔人の羽織る赤合羽、城下を焼きつくす紅蓮の炎…あやかしの色彩が乱舞する泉鏡花の幻想世界を描く、新たなる文藝絵草紙。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
112
泉鏡花のこの作品は読んでいなかったようです。どちらかというと、この本の絵の作家の中川学さん目当てで読んだという事です。ただ絵ばかりではなく鏡花のこの作品も結構幻想的な感じがして私には楽しめました。ただやはり中川さんの赤を基調としたこの一見童話的な絵ではあるものの何かおどろおどろしい感じが印象に残ります。今後何度か再読しそうです。2024/01/03
青蓮
85
殿方の生命は知らず、女の操というものは、人にも家にもかえられぬーー想いが紅蓮の炎となって城下の家々を呑み込み、焼き尽くしていく。嬢ちゃん坊ちゃんと呼ばれる美少年、謎めいた美しい女性、異界の人ならざるもの。鏡花が紡ぎ出す世界は何処まで妖しく、美しく、現実でありながらいつの間にか現実を離れて幻想郷へと迷い込んでしまう。夢と現の境界が溶け合った世界は鏡花ならでは。中川学が描く「朱日記」の世界はモノクロームを基調にしていてシンボルカラーの朱色を酷く際立たせている。終盤の朱色だけの世界は圧巻。鏡花の他の絵本も欲しい2018/12/14
吉田あや
72
窓には砂埃を捲く影が走り、風が…風が烈しいから火の用心。ト竹を割るような声で赤合羽を着た大きな黒坊主が云った「城下を焼きに参るのじゃ」。教頭心得である雑所先生が見聞きした光景は現実なのか、そのあわいで魔が見せた幻想なのか。恍惚したように鬱込む色白の美しい少年の懐から溢れ出す、紅を溶いた玉のような茱萸、総身が夕日に染まる猿の群が見せた千鳥に飛び交う真赤な空は、女の心臓から噴き出す血飛沫のように黒のグラデーションの世界を少しずつ赤く染め上げ、ある時それは風よりも鳥よりも速くその色を反転させていく。(続↓)2019/04/10
sin
61
紅い茱萸、赤毛の猿、赤合羽に赤い旗、朱文字の日記、朱の符号が次々と繰り出されて物語を朱に染めていく…大人としては、不可思議を認めることにやぶさかではないが、それに従うことは屈するようで困難なのだろうか?それともただただ立場故の判断か?現実としてこの物語を単純に災害に準えることは出来まいが、同様のケースで自分たちはどう対処出来るだろうか?うまい塩梅で危機感を保ち、出来事に立ち向かえるだろうか?運が良かったで済ませることなくやり過ごすことが出来るだろうか?やはり、日々信号は赤ではないが黄色なのだろう。2024/05/29
たーぼー
56
以前、文字のみで追った本作のイメージは作品を通して赤(朱)に彩られているな、という漫然としたものだった。今回、中川学の画力によって、それはより、濃厚に、衝動的に塗り替えられることとなった。さらに、美婦人が9歳の美少年、宮浜浪吉を抱き寄せグミの実を与える場面は、児童性愛、つまりペドファイルをも匂わせ、その姿すら淫靡で美しい。あらゆるものを焼き尽くす紅蓮の炎。降り落ちる火の粉が浪吉少年の手に赤いグミの実となって受け止められたとき、悲劇の中で起こる幻影とは鏡花にとって文学的成功の一つであると思い知らされるのだ。2018/09/15
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