出版社内容情報
建築家川喜田煉七郎が責任構成者として関与し、商店建築や構成教育等における草分け的な役割を果たしたモダニズム期の建築誌を復刻!
【監修のことば】梅宮弘光(神戸大学教授)
本誌は,戦前期の建築・デザイン関係雑誌のなかでも,そのアヴァンギャルディズムにおいて尖端をなすもののひとつである。…と書けば,難解で取り澄ました印象を,あるいは尖鋭な政治性を期待されるむきがあるかもしれない。そうであれば,期待はずれと言うほかないのだが,しかし,そのような前衛イメージは一九二〇年代的なもの,三〇年代のアヴァンギャルディズムは,外見や理念よりも技術や論理の内実を追求するものに変わっていく。しかも現実的に,わかりやすく。この動向の先頭をすごい馬力で駆けていった男,それが川喜田煉七郎であった。
本誌は,その彼が独力で執筆・編集したもの。だから,あたかもこの博覧強記のモダニストの頭の中を覗き込む感がある。「アイシーオール」とは,物質世界のすべてであると同時に,ひとやモノの間にある見えない関係をも含んだ「オール」なのだ。見えるものに働きかけて,見えない関係をつくり変えていく,それこそがデザインであり,見えないものを見えるようにして共有する手法が,彼独特の図解であり解説であり,そして主唱する「構成教育」の精髄であった。その結果,誌面からは完成写真や大家の評論はすっかり追い出され,かわりに独自の図解や解説がてんこ盛りである。こうした本誌に横溢する一九三〇年代的モダニズムの姿は,今日の多様な領域の多様な観点から検討されることで,モダニズム研究の深化と新展開をもたらせるにちがいない。別冊資料篇では詳細な索引や年表など,検索の便宜となるデータ整備を心がけた。
目次
第1冊 第一巻第一号・第二号、第二巻第一号~第一二号
第2冊 第三巻第一号~第一二号