出版社内容情報
『ユリシーズ』や『失われた時を求めて』と並び称される20世紀文学の大金字塔、遂に翻訳!カフカらと並ぶ巨匠の最大の問題作。
ジョイスの『ユリシーズ』やプルーストの『失われた時を求めて』と並び称される20世紀文学の大金字塔が、半世紀の歳月を掛けて遂に翻訳なる!!
カフカ、ムージル、ブロッホと並ぶドイツが生んだ巨匠ヤーンの最大の問題作。船、棺、地下室、箱、馬、分身、同性愛、時間、音楽------ひとりの作曲家を主人公に、人間と宇宙の謎と深淵、生存と死の深奥の根拠に迫る一大大河小説。
内容説明
船、棺、地下室、箱、馬、血液交換、吸血鬼、分身、死体保存、天使、妖怪、同性愛、時間、逆行、音楽…ひとりの作曲家を主人公に、人間と宇宙の謎と深淵、生存と死の深奥の根拠に迫る、異端の一大大河小説。
著者等紹介
沼崎雅行[ヌマザキマサユキ]
1932年生れ。慶應義塾大学名誉教授。ドイツ文学専攻
松本嘉久[マツモトヨシヒサ]
1940年生れ。元東海大学教授。ドイツ文学専攻
安家達也[アンケタツヤ]
1956年生れ。中央大学、青山学院大学、杏林大学非常勤講師。ドイツ文学専攻
黒田晴之[クロダハルユキ]
1961年生れ。松山大学経済学部教授。ドイツ文学・ユダヤ文化専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
25
「この人間の歩む道はどこへ通じているのか?」――人物や場所、時間を変えて繰り返される出来事や会話。時間は流れ、時に反復し、逆行するなか自然や音楽、神への思索を追いかけ、囚われ、果ての見えない暗い大河に身を浸す快楽と不安に眩暈がしました。一人の殺人者を赦し、愛し、死による永遠の別れや忘却に抗うアニアスの人生は、彼の作る音楽が表すように「巨大な反抗」だったのでしょうか。分かったことは、そのなかで彼が「愛することを学んだ」こと、女性たちや音楽、そして母親よりも「ほんのちょっとだけ多く」その殺人者を愛したこと。2016/09/23
きゅー
17
2段組700ページの上下2巻組という本書を読み通すのは並大抵の労力ではなかったというのが正直な感想だ。ハンス・ヘニー・ヤーンが語るのは棺桶、死者の蘇り、死の天使、同性愛、親子の断絶、肉欲、音楽の困難さと喜び、名声、裏切り等々、ここに羅列するだけでも何行にもなりそうな勢いだ。その中心にあるのは何か。「わたしたちのその後の人生行路を決定づけたものは罪の意識だった。」その罪の意識をしてグスタフは、彼の人生を方向づけることとなったのではないか。この一大長編は、寄る辺なきままに流れていく。2014/10/20
rinakko
11
素晴らしい読み応え。憑かれ、眩暈し、時に受け止め兼ね立ち尽くし、その全てが快感だったのだから世話がない。類を見ない大河を読んだ…という満腹感で、倒れそうよ。しだいて渦をなす語りと、馴染みない展開を繰り広げる思惟に巻き付かれるばかりで…濃ゆかった。過剰で異様な熱を孕み、どこか腫れぼったい歪みを見せてくる物語だが、その底流にあるのは深くて真摯な思いであり飽くなき問いなのだと、いつとはなく気付いた。そして今また、主人公の数奇な人生に思いを馳せる。彼が本当に望んだこと…わかりにくい。放埓と悪は、罪は、その愛は…と2014/07/29
Mark.jr
5
ムージル、ブロッホの系譜に連なる中央ヨーロッパ文学の王道。Milan Kunderaの言う「世界を相対的に捉えようとした、ヨーロッパが独自に生み出した芸術形式」小説の真髄というか。2024/05/19
APOM
2
ようやく読了!面白かったけどちょっと疲れた。トゥータインに魅力を感じるか否かでこの話に入り込めるかどうかが変わりそう。私はとても魅力的に感じた。上巻に引き続きアニアスの音楽を生み出す過程・考察・苦悩が良かった。トゥータインとの生活が終わり、心の拠り所となっていた棺を手放した後のアニアスの最後は衝撃的。アヤックスとの繰り返される助長なやり取りはやや辟易したが、彼が「悪」の顕在と捉えると府に落ちた。第三部 「悪魔」と「天使」の物語もたっぷり読みたかったなぁ。2015/02/06