出版社内容情報
アイルランドの畸人が残した、ロマン主義的な情念、善と悪、聖と俗との混沌に満ちた、半世紀に亘るゴシック・ロマンスの最後の熱風。
アイルランドの畸人マチューリンが残した、ロマン主義的な情念、美と醜、善と悪、聖と俗との恐るべき混沌に満ちた、
ゴシック・ロマンスの熱風の掉尾を飾る、最高の作品。
「メロドラマに登場する悪党のすべては、牧師マチューリンのかの偉大なる悪魔的創造、
メルモスなる有名な放浪者の末裔であると言ってさしつかえない」(ボードレール)。
ロセッティやワイルド、ポー、そしてバルザックらによって熱烈に讃美された不朽の巨篇。
【著者紹介】
小説家、劇作家。1782年アイルランドのダブリンに生まれ、1824年ダブリンに没す。ダブリンのトリニティ・カレッジを卒業後、牧師となる。1807年、処女作『運命の復讐、モントリオ一族』を出版、ウォルター・スコットに称賛される。1816年にドゥルアリイ・レーン劇場で上演された『バートラム』は大成功をおさめた。1820年に上梓された最大の傑作『放浪者メルモス』は、彼の死後ロセッティ、ワイルド、ポー、ボードレール、バルザックらに多大な影響を与えた。
内容説明
「メロドラマに登場する悪党のすべては、牧師マチューリンのかの偉大なる悪魔的創造、メルモスなる有名な放浪者の末裔であると言ってさしつかえない」(ボードレール)。ロセッティやワイルド、ポー、ソしてバルザックらによって熱烈に讃美された不朽の巨篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
131
分厚さに手が痛んでも、その痛みがもどかしいほどに熱中した。実際、登場人物を生きたままとらえるために、一気に読んで良かった。宗教的問いかけは、無宗教に近い私などにはどこか虚しいのだ。200年前の作品であるから、放浪者という意味が現代とは違う。神への問いかけ、教理問答の中での迷い子たるメルモスは、天国への道を探しているのだろう。しかし、こういう問いは、現世での生活の苦しさ、貧しさがあるために、その苦悩を救い上げるものではないかと思うと、読んでいて苦しくもなる。しばし、放心。2017/06/17
kasim
27
ゴシックロマンスの白鳥の歌とされる作品。呪われた怪人メルモス。スリリングなプロットと陰影に富んだ描写が両立するとこんなに長くなるんだ…。しかもリレーと入れ子の連続で話がどんどん変わるという複雑な構造。バランスが少し悪いし疲れたが、素晴らしかった。今まで読んだゴシック小説の主人公には、これほど叙事詩的な葛藤はない。「決して成功することのない誘惑者」(解説)と雛鳥のように彼を慕う圧倒的に可憐な楽園の少女イマリーに慄然とする。2018/05/21
cowley
6
分厚さにひるんだけれど、すごく面白かった。もう次から次へと。最後のあたりで再登場した人物を『(この人物のこと、読者は既に失念してしまわれたろうか)』ってホント忘れてたし!2012/12/01