出版社内容情報
倒叙ものの名作『迷宮課事件簿』(ハヤカワ文庫)で知られるイギリスの作家、ロイ・ヴィカーズが〈迷宮課〉執筆前に刊行した『フィデリティ・ダヴの大仕事』。ミステリ・ファンに人気が高い1冊を本邦初邦訳。
妖精のようにキュートな女怪盗のフィデリティが、大勢の手下を使って大胆な犯罪を実行!!
悪徳商人やスコットランド・ヤードを手玉にとっての大活躍。 「ハウダニット」を楽しめる短篇集。
【著者紹介】
1888年?~1965年。イギリスの作家。倒叙ミステリの名手として知られる。著書に『迷宮課事件簿』(早川書房)など。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
61
〔再読〕兎に角文句なしのエンターテイメント、アニメの主人公の様な感じさえする。可憐な小娘の様なフィデリティが、数多くの手下の男を操って、大胆不敵な犯罪を実効する爽快な物語り。本作は怪盗小説の典型であるハウ・ダニット、「どうやって厳重な警戒の中盗んだのか」の推理ゲームを楽しむものです。奇想天外なトリックと完全無欠な計画が、ワクワクどきどきの12短編。あの都筑道夫氏が絶賛していたらしいが、私も大絶賛と書き留める。意外な展開に唸らされる事も多く、彼女の魅力と物語りの構成に虜になる読者、続出であろうと確信する。2016/07/18
りつこ
17
なんともいえず昔懐かしい香りがするなぁと思ったら、やはりかなり前の作品だった。小学生の時に初めてルパンを読んだ時のことを思い出したよ。弱気を助け強きを挫く。大胆不敵で無敵の美女怪盗。仲間には変装の達人の元俳優や科学者がいて、警察に正体を知られていてなお捕まえられない。安心して気持ちよーく読める。こういうのもたまにはいい。2012/05/29
みやび
10
無垢で世間知らずなお嬢さんを演じて、つけ入る悪人を利用し、ぐうの音も出ないようにしてからお金を騙し取るフィデリティ・ダヴと才能ある仲間たち。怪盗というより詐欺師かなあ。なんだか応援したくなる。ダヴがなぜグレイの服しか着ないのも意味深ですね。いつか逮捕してやろうと狙ってるレーソン警部補はお気の毒だけど、ちょっと笑えました。2022/02/27
すけきよ
9
怪盗らしく美術品が多いんだけど、会社や評判など、形のないものを盗むエピソードも少なくない。「どうやって盗む」と言うより、「どうやって法の目をかいくぐるか」が強い印象で、コンゲーム的展開のエピソードも多い。それぞれ特技を持った手下たちは、女王様の役に立ちたいと常に望むという、高度な放置プレイ。同時に、フィデリティが助けるのは女性が多く、「お姉様」と呼ばれる百合展開。また、彼女の服装も仕草もピューリタン的であり、そこにインモラルを感じなくもない。こんな楽しみ方も推奨(笑)2011/12/28
ヨッシー
8
なかなか楽しめました。ヴィカーズって、こういう愉快なミステリも書けるんですねぇ……迷宮課とか、ちょっとマジメくさってるじゃないですか。フィデリティが、悪どく金を稼いでいる方々から華麗に大金を騙し取る、という話です。騙し取る方法も、普通の盗難からペテン・詐欺など実に多彩で、どれも一捻りあって楽しめます。レーソン警部補との微妙な関係が良いですね。彼はこの後、やっぱり迷宮課に飛ばされたんでしょうか(笑)それにしても、周りが見惚れるほどの美少女(美女ではない?)だとかいうフィデリティをいっぺん見てみたいもんです。2012/02/04