内容説明
アメリカSF界のレジェンド、カリスマSF作家ハーラン・エリスンはSF以外の小説も凄い!犯罪小説を中心に非SFジャンルの初期傑作を精選、日本オリジナル編集・全篇本邦初訳でおくる暴力とセックスと愛とジャズと狂気と孤独と快楽にあふれたエリスン・ワンダーランド!
著者等紹介
エリスン,ハーラン[エリスン,ハーラン] [Ellison,Harlan]
1934年オハイオ州生まれ。学生時代からのSFファン活動を経て56年に短篇“Glowworm”でSF作家デビュー。製材所工員・トラック運転手・書店員・コピーライターなど職を変えながらSF・ミステリー・犯罪小説を大量に発表、58年に非行少年グループを取材した第1長篇Rumbleを刊行。その後SF作家として人気を博しながらテレビのシナリオライターや批評家としても活躍する。67年、巨大アンソロジー『危険なヴィジョン』を編纂、アメリカにおけるニュー・ウェーヴ運動を牽引した。2018年逝去
若島正[ワカシマタダシ]
1952年生まれ。京都大学名誉教授、詰将棋作家、チェス・プロブレム作家。著書『乱視読者の英米文学講義』(研究社)など
渡辺佐智江[ワタナベサチエ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
135
11の短編。『第四戎なし』キレた狂気を思うと覚える喉のつっかえ。この1つを読めただけで本書を手に取った甲斐がある。人殺しになった少年』でも、共通するのは少年を追いやるものとそれを理解して欲しいという痛切な想い。『ジェニーはおまえのものでもおれのものでもない』徹底的に無茶苦茶に痛みを味わわないと受けとめることも立ち直ることも出来ない事はある。セックスにだけ夢中になる女を思ってやっても打つ手なし。『孤独痛』の痛みは読む人の痛みを和らげる痛切な痛み。『ガキの遊びじゃない』も好き。ラリり方が合わない短編もあった。2019/08/07
コットン
71
題名が意味深で暴力的でもあるのだが、意外と芯は内省的な非SF短編集。読んだ中で一番は『第四戒なし』で当事者としての事実が欠落したまま、父親との関係を追いかけ続ける。その必死さが悲しみを誘う。全体的に短編集であるが故もう少しこの部分を読みたいという所で終わるので置いてきぼりを食らった感じなのが残念。2020/09/17
ヘラジカ
62
思わず唸り声を出してしまうほど真に迫った表現力!エリスンは短編集(『死の鳥』)を一冊読んだのみだが、非SFのこの作品集もあちらに負けず劣らずの凄みがある。短篇でありながら感情という汁気が滴りそうなほど瑞々しい。タイトルからして荒々しい作品の数々は、開放的で空漠とした悲しみすら備えている。細部を観ても機関銃のように発せられる言葉の数々は、暴力的ながら洗練されていて無駄がない。どの作品がとは言えないくらいに収録作すべてが良かった。お気に入りは『孤独痛』『ガキの遊びじゃない』『ジルチの女』『盲鳥〜』。2019/05/28
りつこ
52
いかしたタイトル。これは最後の二編の中に出てくるセリフ。暴力的な話が多いけど切実な寂しさが際立つ。父親を殺したい少年の燃え立つような憎しみと思慕。圧倒的な弱者だった少年がたまたま手に入れた銃。作家の物語は作者自身の経験や想いが投影されてるのか?「第四戒なし」「ジェニーはおまえのものでもおれのものでもない」「クールに行こう」「盲鳥世、盲鳥、近寄ってくるな!」が特に好き。2019/07/26
R
47
すさんだ生活を切り取った短編集でした。本来はSF作家なんだそうだけども、本書はそこらにありそうな不穏な日常を切り取った現代小説。乱暴、乱雑な言葉を並べて、ややもすると下品な表層を描きつつ、その奥で孤独とか、狂気とか、いかんともしがたい執着のようなものを描いていて面白かった。自叙伝めいた内容にもなっているそうだが、個人的に、エロ小説を書けといわれて、エロい秘書に書き方を習ったら、エロくなりすぎて没になったという話が、荒唐無稽なんだけど凄い面白かった。2020/01/20