内容説明
セント・アガサ女学校に通う、ダイアナ、シーラ、クレア。大戦によって引き裂かれ、女学校という不思議の国を出た3人が、オールド・ガールズとなって再会した、その目的とは―。20世紀を代表する女性作家ボウエンが描きだす、少女たちの無垢と棘。
著者等紹介
ボウエン,エリザベス[ボウエン,エリザベス][Bowen,Elizabeth]
1899~1973。アングロ・アイリッシュの作家。アイルランドにある一族の居城ボウエンズ・コートを維持しながら、イギリスに住んで二度の世界大戦の戦火をくぐり、73年の生涯で長篇小説10篇と約90の短篇小説を書いた。代表作『パリの家』(1935)はイギリスで20世紀の世界文藝ベスト50の一冊に選ばれ、『エヴァ・トラウト』(1969)は1970年のブッカー賞の候補になった
太田良子[オオタリョウコ]
東京生まれ。東京女子大学文学部英米文学科卒。学位論文はT.S.エリオット。71~75年ロンドン在住。79年東京女子大学大学院英米文学研究科修士課程修了。修士論文はヘンリー・ジェイムズ。81年東洋英和女学院短期大学英文科に奉職。94~95年ケンブリッジ大学訪問研究員。98年より東洋英和女学院大学国際社会学部教授。日本文藝家協会会員。日本ペンクラブ会員。三代目のクリスチャン(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
21
装丁は少女たちの髪がモチーフとなっているのでしょうか?少女同士の互いを比べて感じることができるささやかな優越感、いじわるされてもついていく子供故の依存の描写が上手いです。無邪気でそれ故に容赦なかった甘い時期には戻れない諦観と回想の中で認識できたけど今の生活では必要されない些末な謎を残して物語はかつての少女たちの中に閉じる。2013/02/19
rinakko
16
再読。素晴らしい読み応え。ますます大好きだ。ボウエンの少女たちの、くっきりとした輪郭と閃光の如く忘れがたい魅力。殊にこの作品では、11歳で別れてしまった3人の少女たちが、その後何十年も経て再会を果たす。その三者三様な魔女ぶりと(曰く、“大鍋がぶくぶく”)、彼女たちの辛辣なやり取りも頗るよかった。元々好きではなかったのに、いつの間にかいつも一緒にいた女の子同士の感覚。偶々何となく友達になって、苛立ちや疎ましさを隠しきれず過ごす日々。そこにかけがえのない時間が流れていたなんて、ずっと後になるまで知る由もない…2015/06/02
antoinette
5
「あの薔薇を見てよ」で訳文に免疫がついたつもりで、勝本みつるさんの表紙に気を許し、買ってしまったが……訳者さんは自分で訳しながらボウエンの世界に酔い痴れて、日本語作品として推敲する余裕がなかったようだ。日本語として認められない表現が多すぎます。日本語の並びから英語の原文を想像できるくらいで、そこからまともな日本語に脳内で訳し直しながら読んだ(疲れた……)。ぼんやりと感じられたボウエンの空気はやはり惹かれるので、この訳しかないことが本当に悲しい。まあ英語ができないこっちの負け、ですね……。2011/11/25
hagen
4
三人の少女が、古き良き時代の幼き女学生時代の記念にタイムカプセルに封印した遺物。二つの世界大戦を経て、壮年期を迎えた三人はその忘れ形見を通じて埋葬された過去を紐解いていく。ボウエンの他の物語同様、登場する主要な三人は緻密ではあるが時には間接的な表現で煙りに巻かれる事はあるが、如実にそれぞれのパーソナリティーが浮かび上がる仕組みになっていて、腐れ縁の三人が個々に持つ特性の違いが浮かびあがる。異性には理解し難い部分なんだろうが、女の友情というものは物語の遺失した埋蔵物の様に不可解なものという事なのだろうか。2020/04/16
椿子
4
名作。少女が大人になっていく、という通過儀礼を、過去をまじえて上手く描いている。幸せだった過去、を回想するのは、楽しいけれど苦味も混じる。ボウエンの小説の描き方というか、登場人物の動かし方、みたいなの好きだなあ。太田さんの訳にはどうにか慣れてきた。細かい所を見ないで、おおまかな全体のストーリーを読むようにすればそれほど苦痛ではなくなってきた。2010/11/17