内容説明
若い恋人たちの恋路を阻む階級差の壁と不幸な誤解、高貴なる豚エンプレスを襲うどす黒い影。大英帝国社交界を震撼させるギャリー伯父さんのスキャンダラスな回想録の行方は?『夏の稲妻』で大活躍のお仲間に、マンモス出版社のワンマン社長ティルベリー卿、ハンサム・リッチで気のいいモンティ・ボドキンら、強力新キャラクターも続々登場して、ブランディングズ城はいよいよ大混乱。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
104
英国で絶大な人気を誇る作者の代表作の一つらしい。エムズワース卿の居城に住む弟のギャラハッド閣下が書いた波乱万丈の「自伝」を出版したい出版社社主のティルベリ―卿とそれを阻止したいエムズワース卿の親族達との争奪戦、という内容である。「英国的ユーモアが泉のごとく湧き出ている」と言われる最高傑作とのことであるが、東洋の一読者にはそのオモシロサがほとんど感じられなかった。むしろブタを愛するエムズワース卿のアホさ加減に真面目に読む気を削がれたとさえ言いうる。どうもウッドハウス的ユーモアは苦手である。G1000。2023/12/14
ケイ
88
ウッドハウス4作目。ジーブスシリーズ3作続き、こちらも読んでみた。結婚したい二人が出てくるところ、貴族が話の中心であるところはかわらないが、ストーリーとしてはこちらの方がさらにエキサイティングだ。こんな母親も困るけれど、伯父さん達の変人ぷりも相当なもの。むちゃくちゃになっている流れの中に、ブタを出してホッとさせる演出もなかなか。2015/10/15
扉のこちら側
83
2016年86冊め。【116/G1000】ドイルのベイカー街、ウォーのブライスヘッドと並んで英国文学史上最も有名な舞台と言われるブランディングス城(モデルはグロスターシャーのシュードリー城らしい)。ウッドハウス作品ではおなじみのおじさんおばさんと、恋する世代の甥っ子姪っ子に加え、物語の鍵を握る巨大な豚! ただ今作品は恋愛関係よりも、不都合な過去の暴露を妨げようとする人たちがギャラハット伯爵の回顧録原稿を奪うために暗躍するエピソードの方がおもしろい。2016/02/11
NAO
58
いつものことながら、ウッドハウスは徹底的に貴族をコケにしている。だが、「ジーヴスシリーズ」のジーヴスのような慇懃無礼でちょっと悪意を感じてしまうようなあくの強い登場人物がおらず、誰一人割を食う人もいないため、とても読み易く、心から楽しめる。偏狭だったり、高慢だったり、どうしようもないお馬鹿だったりする貴族たちに交じって、邪心のない可憐なスーと、馬鹿をやり尽くした末のギャラハッドの大人な対応が好ましかった。2016/09/11
ほりん
38
20世紀初頭,イギリス中西部にあるブランディングス城が舞台。若い二人の恋と,ある回想録の原稿をめぐる物語。その回想録には,イギリス上流社会の多数が面目を失墜するような若いころの愚行が記してある。この回想録を出版したい側となんとか阻止したい側の攻防に,恋する二人や,豚をこよなく愛する伯爵など,いろいろな要素が絡んで,おバカでナンセンスでユーモア満載の物語となっている。登場人物が善良なところが快い。笑いを注入したいときに読むべき一冊。2015/06/28