内容説明
アイルランドの小さな村を舞台に、専制的な父親の元で、自分の将来についてさまざまに思い悩んで成長していく一人の若者の姿を、ジョイス、ベケットらにも連なる実験的手法を用いて赤裸々に描き、発表当時発禁処分まで受けた青春小説の傑作。
著者等紹介
マクガハン,ジョン[マクガハン,ジョン][McGahern,John]
1934年アイルランドのダブリンに、警察官の父と小学校教諭の母との間に生まれる。大学を卒業後、小学校教員となる。1963年The Barracksで作家としてデビュー。1965年の第二作『青い夕闇』が発禁処分を受け、教員の職を失い、ロンドンに出て、臨時教員や建築現場の労働者として働く。スペイン、アメリカなどを転々としたすえ、1970年代にアイルランドに帰国、再び小説の執筆を始める。『Amongst Women(1990)』でアイリッシュ・タイムズ賞などを受賞、またイギリスのブッカー賞の候補作にもなった。現代アイルランドを代表する作家の一人である
東川正彦[ヒガシカワマサヒコ]
1946年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
24
神父や実父に性的虐待を受けていた記述が問題視され発禁処分を受けた。人称を意図的に作中で変えている。子供達は気分が変わり易い父親の顔色を窺って生きている。また二人ともカソリックの呪縛に捉われながら制御できない感情に苦しんでいる。自伝的要素を含む。2017/09/18
algon
12
まだ情報網が網になっていなかった時代、アイルランドの田舎育ちの少年が青年として巣立つまでの物語。青春期なら誰でも抱えていた将来への不安、性・異性への渇望、家族(ここでは父親)との相克などが沈潜しながらも妙に詩的な文で綴られる。猛勉強で秀才として大学に進むが神職の偽善に気づき教会への道を主体的に閉ざしていく。その経過で横暴専横な父親にも子としての尊厳を認めさせていく。赤裸々な筆致だが模索しながらも徐々に人間として自立の道を開いていく主人公に好感を持った。神父のセクハラ描写のため祖国で発禁処分を受けた問題作。2022/10/04
taruho
2
主人公の心情が淡々と描かれてて若さゆえのジレンマはとっても切ないんだけど、ちょっともの足りなさが残った。なんか足んないなあ。2011/07/01
hagen
1
田舎の農家、専制的な父親の絶対服従の生活に汲々とした日々を送る青年の苦悩。信仰にも身を寄せる事にも将来にも疑問を感じなら苦悩の中、一筋の光明に希望を見いだす事。「人生は何度もやり直しがきく」という言葉が救いになっているのだろうか。生きる上でのベストな人生の選択という事を至上の目的とする事に懐疑的になるのも、この青年期に起こり得る事なんだろう。2020/03/08
ローリングエルボー
1
淡々としている。2015/02/04