内容説明
古書店ふきだし堂で僕が入手した一冊の本は、奇妙な液体が入った〈飲む本〉だった―乱反射する読書生活の物語『小説・読書生活』。川岸の寂れたレストハウスで、僕と毛利君は彼岸と此岸がごたまぜの時間の中に投げ込まれる―不条理なユーモアで幻視の光景を現出させる『猫が嗅いだ匂い』他。内田百〓や夢野久作の衣鉢を継ぐ、幻想文学の極北、驚愕の前衛私小説全4編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青蓮
114
「小説・読書生活」「猫が嗅いだ匂い」「観光用虹発生装置」「生きている渦巻き」4編収録。ずっと気になっていた作品で漸く読めました。京極夏彦の百鬼夜行シリーズに登場する関口巽のモデルになっているのは有名な話。とても面白くて、あっという間に読了してしまいました。幻想小説とも、SFともとれる作風は、不思議な気持ち悪さ(褒めてます)があって素晴らしかったです。もうこの方の作品が読めないのは残念でなりません。もっと読んでみたかったな。表題作と「生きている渦巻き」がお気に入りです。2017/10/05
藤月はな(灯れ松明の火)
18
京極堂シリーズに登場する関口巽のモデルになった人の最初で最後の小説。読友さんの感想を拝見しなかったら知らなかったかもしれません。恋々さん、きっかけを作っていただき、ありがとうございました。時期が時期だったので酩酊感と眩暈、頭痛と座ってるのに後ろから墜ちていくような不安定さ、血が外へ流れていくような読書となりました。眩暈坂を登っていく時はこんな感じだろうか。のらくらと抜け出す非現実と現実が淡々と語られるので映像の一枚の絵画を見ているよう。京極夏彦氏の作品とも通じる部分もあったのがなんとも言えません。2012/04/16
かやは
12
文章で表現されているからこそ楽しめる、前後の繋がりのない支離滅裂な描写。荒唐無稽な幻想文学のようだけど、何処か現実とリンクしているようにも感じられる。正直よくわからないんだけど、純粋に文章が美しくて好き。読んでいて興味深い描写が続くので、理解できなくても読み進められる。2020/06/16
あおさわ
11
関口巽のモデルと知って手に取ってみました。シュールなストーリーのないストーリー。なぜかやたら味覚を刺激させられた気がしました;「読書生活」と「生きている渦巻き」が好きです。2011/02/11
三柴ゆよし
9
「京極堂シリーズ」の語り手、関口巽のモデルともいわれる人物、関戸克己の処女出版にして遺作。たしかに百閒や久作にも通ずるが、表題作や「生きている渦巻き」を読むかぎり、ボルヘスやコルタサルといった南米文学からの影響も見受けられる。関口巽の小説のタイトルに、たしか「眩暈」というのがあったはずだけど、本書はそんなめくるめく「眩暈」の世界を描いた作品集である。存命であったなら、一体どんな作品を物していたのだろう。つくづく残念だ。それにしても国書刊行会はやはり偉かった。2010/01/11