内容説明
イングランド南部の丘陵地に宏壮な屋敷を構える名門テンプラー家を突如襲った黒い影。渓谷の小道で、石楠花の咲き乱れる湖岸で、ロンドンの裏通りで、一族皆殺しを図るかのように次々に凶行を重ねていく謎の殺人者に、警察もまったく為す術がなかった。事件ごとに現場付近で目撃される黒衣の男の正体とは?そもそも犯人の目的は何なのか?数多の恐ろしい謎を秘め、運命の歯車は回り続ける。バーザン&テイラー『犯罪カタログ』や森英俊『世界ミステリ作家事典』が「類例のない傑作」と口を揃えて激賞するヘクスト=フィルポッツの異色ミステリ。
著者等紹介
ヘクスト,ハリントン[ヘクスト,ハリントン][Hext,Harrington]
1862‐1960。本名イーデン・フィルポッツ。インドで英国軍人の家に生まれる。イギリスの学校を卒業後、保険会社の事務員として働きながら創作を始め、ダートムア小説と総称される田園小説で人気を博した。歴史小説や幻想小説、戯曲、詩など、250冊以上の多方面にわたる著作をもち、探偵小説も40冊に及ぶ
高田朔[タカダサク]
静岡県生まれ。中央大学法学部、東京都立大学人文学部卒業
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
schizophonic
4
「二〇年代当時のもっともばかばかしい産物」とまでいわれたら、これはもう読むしかねぇと勢い込んだものの、サッカーから生まれたとはいえ、ラグビーと前者が違うスポーツなように、いまの目で謎解きミステリとして読むと、まるで違うルールに則って書かれているようで、評価のしようがない気さえする。ずいぶん思い切った動機もいまとなってはそれほど独創的とはいえなくなってきているかもしれない。だが、本当にばかばかしいのは、発表から80年以上たったいまでも、この動機をばかばかしいと一笑に付すことができない、この世界だと思うのだ。2011/02/15
madhatter
2
本作の最大の目玉は、やはり犯人の動機にあると思うが、現在ではやはりインパクトに欠ける。また、明らかに犯人の動きに対して、叙述がアンフェア。この点の書きようによっては、推理小説としての読み応えは上がったかもしれない。しかし本作は、動機について深く考えたとき、読者の中に衝撃よりも迷いが生じることで、印象に残るのではないか。特に犠牲者達が普通に考えれば善良で、殺される理由は見つからないことが、余計に迷いを大きくする。2011/12/03
nashi
2
なるほど、謎解きとしては物足りないところがある。それにしても犯行動機に戦慄しつつ、犯人を悪人としきれない自分がいて、そんな自分に危うい揺らぎを感じてしまうのだ。おそらくラストで真相を知った警察官も、そうだったに違いない。2011/09/29
mercury
2
こういう終わりかただったらちょっとがっかりだなぁと思った通りだった。でも時代の雰囲気を堪能できて満足。現代の作家が文献や想像で作り上げたものではなく、その時代の人達が信じ、感じていたものが描かれている。2011/01/23
kanamori
0
☆☆☆2013/09/25