内容説明
英国国会議事堂の時計塔、ビッグ・ベンの改修工事中、壁の中からミイラ化した死体が発見された。後頭部を打ち砕かれ、着衣等から100年前のものと推定されたこの死体をめぐって検屍裁判が開かれたが、事件に興味を感じた若手議員ブライは調査委員会を組織し、謎の解明に乗りだした。やがて少しずつ集まりだしたデータから、19世紀の国会議事堂建設をめぐる秘話と、激しい愛憎の物語が次第に明らかにされていく。個性豊かな国会議員の面々が推理の饗宴を繰り広げる「時の娘」風の歴史推理の前半から、後半にいたって物語は思わぬ展開を見せはじめる。読み巧者フランシス・アイルズがただ一言、「真の傑作」と評した50年代の知られざる名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
にゃー
5
これはかなり面白いのでは?前半の雲をつかむような捜査から中盤の逆転を挟んで見事な着地を決める。偽の解決が無駄になってないところがいい。2020/05/11
Aiko
4
中盤のどんでん返しがとても印象的。ラストも、探偵役の切り札もなかなか唸らせてもらえたが、それ以上に犯人の切り返しが鮮やか。キャラクターが多くて見分けが付きにくいのが難点。2012/07/20
schizophonic
4
個性豊かな議員たちが、わずかな手がかりをもとに、時の流れがもたらす壁にぶち当たりながらも、100年前の殺人の謎を解いていく過程は読みごたえがある。さらにこれでは捻りが足りないとばかりにアクロバットを決めてみせる。2011/04/01
えみっち
4
読むのは2回目。前はいったいどうやって読み終わったんだろう?と悩むほどに今回は時間がかかりました。きっと前回はただ字面を追っていただけに違いない。巻末の覚書によると訳者は原書を2日間で読み終えたようですが、私には絶対無理。そのぐらいの頭脳労働。英語でこれを読んだら知恵熱で寝込みます。また「本作品の背景には、イギリス人なら誰でも知っているような歴史的事実や国会議事堂に関する知識がある」とも書いてありますが、そうかあ?と首をひねらずにはおられません。イギリス人でも知らないことがたくさん書いてあると思います。2010/08/12
tomo6980
3
とにかく公文書は廃棄しちゃダメ、が教訓。絶対、作者は公務員、と思って略歴を見たら案の定。2021/07/04