内容説明
警察本部長スコール大尉は、20年前の事件の復讐を誓う元服役囚に脅かされていた。そしてついに、警察本部内に二発の銃声が響きわたった。白昼堂々、執務室で本部長が射殺されるという前代未聞の大事件、しかも一見単純な事件の裏には、驚くべき犯人の執念と周到な計画が隠されていた。
著者等紹介
ウエイド,ヘンリー[ウエイド,ヘンリー][Wade,Henry]
1887~1969。本名ヘンリー・ランスロット・オーブリー=フレッチャー。イギリス、サリー州の名家に生まれる。近衛兵連隊に入隊、第1次大戦で数々の軍功をあげ、除隊後は行政、司法の重職を歴任。父親のあとを継いで准男爵となる。ウエイド名義で発表した本格ミステリは、黄金時代探偵小説の風格に満ち、リアルな警察捜査の描写と倒叙形式の導入、高度な社会性によって高く評価されている
鈴木絵美[スズキエミ]
愛知県生まれ。南山大学外国語学部卒。翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
timeturner
5
最初の数ページで犯人の見当はつくけど、レッドへリングも伏線もきっちり回収する丁寧な仕事で、最後まで退屈せずに読めた。プール警部はあらゆる可能性を地道に潰していって真相に至るタイプで、読者を騙そうとするケレンがないので信頼できる。好きなタイプだけどちょっとキャラが薄いかな。2022/10/03
tomo6980
3
一つ仮説を立てて捜査。否定されるとまた仮説、検証。これを繰り返す。これはクロフツじゃないか。このじっくりした展開が懐かしくも楽しい。どうしてクロフツはほぼ全作品が訳されたのに、ウエイドがここまで取り残されたのか不思議。2021/07/10
ぼくねこ
2
舞台から設定から登場人物まで計算し尽くされたプロットは圧巻。黄金期の他の作品たちに引けを取らない名作。ただ、もう一捻りあっても良かったかも。2017/01/19
madhatter
2
やはりこの人は端正な作品を書くなあという印象。推理小説としては、奇妙な状況で発生した殺人から、Howに流れるかと思いきや、ある種のWhoがメインとなる。この関連性が薄いという貫井氏の指摘は一々尤もではあるが、捜査の流れの描写が実直かつ丹念なのが楽しめた。この「「楽しめた」というのがウエイドの凄いところで、本来斯様な描写は退屈に感じられそうなものが(しかも犯人が途中でわかる)、決してそうではないのだ。他作を読んでも思うが、翻訳というフィルターを通してもなお、読者を引き込む文章力には脱帽。2012/06/01
schizophonic
2
さまざまな仮説を立てては地道に検証し推理を発展させていく過程がじっくりと描かれていて、犯人と探偵の手を読みあいを見せられているような緊張感が漲り、全編で「いまミステリを読んでいる」という充実感が味わえた。過程を読む楽しみに加えて、ときおり交わるユーモアが推理一辺倒の堅苦しい印象を和らげている点は、鮎川哲也に通じるものがある。シリーズ・キャラクターのプール警部の紳士的な物腰には惹かれるものがある。2011/02/28