内容説明
小説家ロナルド・ストラットンの屋敷で開かれた“殺人者と犠牲者”パーティの席上、ヒステリックな言動で周囲の顰蹙をかっていた女性が、余興として建てられた絞首台の上で首吊り死体となって発見された。すべての状況は一時的衝動による自殺を示していたが、ある致命的な事実に目をとめたロジャー・シェリンガムはひそかに調査を開始した…。
著者等紹介
バークリー,アントニイ[バークリー,アントニイ][Berkeley,Anthony]
1893‐1971。本名アントニイ・バークリー・コックス。ユーモア作家として出発した後、“?”名義で、名探偵ロジャー・シェリンガム登場の探偵小説第1作「レイトン・コートの謎」(25)を発表。以後、バークリー名義で「毒入りチョコレート事件」(29)、「第二の銃声」(30)、「試行錯誤」(37)などの独創的なアイディアに満ちた探偵小説、フランシス・アイルズ名義では「殺意」(31)他の殺人者の心理に重きをおいた犯罪小説を発表。黄金時代探偵小説の頂点を極めるとともに、以後のミステリの流れにも大きな影響を与えた
狩野一郎[カリノイチロウ]
1961年、神奈川県生まれ。神奈川県立多摩高等学校卒業。藤原編集室翻訳課所属
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
本木英朗
15
小説家ロナルド・ストラットンの邸では、参加者一同が高名な殺人犯あるいはその犠牲者に扮装した、風変わりなパーティーが催されていました。ロナルドの友人で自称「人間性の観察者」シェリンガムもその場に招かれ、他の参加者に好奇の目を向けていたところ、ひとりの女性が彼の心を捉えます。その女性はロナルドの弟デヴィッドの妻イーナでした。(→)
本木英朗
14
英国の黄金時代本格ミステリ作家のひとりである、アントニイ・バークリーの長編のひとつである。これは東京時代に5回ほど読んでいたが、弘前に帰ってからは今回が初めてだ。小説かロナルド・ストラットンの屋敷で開かれたパーティーで、ヒステリックな言動で周囲の顰蹙をかっていた女性のイーナが、余興として屋上に建てられた絞首台で死体となって、発見される――という話である。これはもう、買って読むしかないってば! まあ、今は創元推理文庫で買えるので、こっちの方がよいと思うけれど。(→)2025/07/20
kyoko
14
いやこれはおもしろかった。古畑任三郎の原型?と見紛うような。危機に瀕したロジャーがしでかす様々な小芝居がおもしろくて声を出して笑ってしまった。最後どんなどんでん返しかと思っていたらまさに想像の斜め上。このシリーズ、正義とか真実への皮肉というか、裏の面というか・・・ああ、わかった。ドラマ「リーガル・ハイ」の雰囲気だわ。(感想も支離滅裂)2021/09/27
まど
8
ハラハラしながらグイグイ読むことはなく、ムムム…ムムム…と読み進めていき「フーム。なるほどね」という感じのミステリーだった。2010/04/19
madhatter
6
再読。バークリーは変わり種の推理小説を遺した作家だが、本作は中でも飛びきりの怪作だ。多くの推理小説では、司直の手に委ねるかは別として、探偵は犯人に至る。また、探偵の失敗を描く作品も多いが、それでも失敗を通して探偵は真相を知る。そこにあるのは真実への希求だ。だが今回のシェリンガムは、真相を求めるよりも、事実ではない物語を描くために奔走する。そして「実際に何が起こったか」を彼は知らぬまま、物語は終わる。私はそれなりに推理小説を読んできたと思うが、真実を渇仰しない名探偵って、後にも先にも彼だけのような気がする。2011/10/08