内容説明
地方名士エイマー氏は金と暇ににあかせて探偵のまねごとを思いつき、かつて人気絶頂の映画俳優が突然引退した謎を解こうと調査を始める。やがて俳優の過去に秘められた2つの事件が浮上するが…。30年代英国ミステリ界の異才が盟友バークリーに捧げた問題作。
著者等紹介
ケネディ,ミルワード[Kennedy,Milward]
本名ミルワード・ロウドン・ケネディ・バージ。イギリス生まれ。オックスフォード大学卒。第1次大戦中は陸軍情報部に勤務、戦後は官僚、ジャーナリストとして働きながら、謎解き興味とアイロニーに満ちた探偵小説を執筆。セイヤーズ、バークリーらと共に、30年代英国ミステリを代表する探偵作家。代表作に『死の濃霧』(29年)、『半旗の殺人』(30年)、『スリープ村の殺人者』(32年)などがある。ディテクション・クラブの中心メンバーとして、リレー長篇『漂う提督』(31年)、『警察官に聞け』(33年)にも参加、〈サンデー・タイムズ〉ではミステリ書評を担当した
横山啓明[ヨコヤマヒロアキ]
1956年、北海道生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。翻訳家。主な著書に「海外ミステリー事典」(共著、新潮社)、訳書にマシュー・バンソン「シャーロック・ホームズ百科事典」(共訳、原書房)などがある
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
cinos
10
探偵が一人称で推理を語っていくが、その人物がとてもイヤな奴で、自分でそれに気づいていないのが笑える。シニカルなラストは読む価値があると思う。2015/08/14
kado
7
海外の某作品が思い浮かびました。行間から滲み出る嫌らしさにニヤニヤと楽しめるかそうでないかで評価が変わるかもしれません2013/09/10
Susumu Kobayashi
5
グレイハースト村のフェアローン邸に隠居している裕福なグレゴリー・エイマーは、隣家に引っ越してきたモートン夫妻の夫が引退した映画俳優ボウ・ビーヴァーではないかとの疑惑を抱く。ボウ・ビーヴァーは人気の絶頂で突然の引退をした男で、さまざまな謎めいた行動が好奇心をそそっていた。金に不自由しないエイマーは、新聞記事を集めたり、探偵社に調査を依頼して、ビーヴァーのことを調べ、独自の推理を展開していくが……。推理が多いのは読んでいて面白いのだが、カタルシスの得られない意外な結末に驚くしかない。野心作ではある。2015/07/15
Aiko
5
探偵という人物と行為との嫌らしさをこれでもか見せ付けられる作品。手記の行間から見え隠れする主人公の独りよがり、鼻持ちならない俗物っぷり、そしてそれを上辺だけでも取り繕おうとする矮小さが見どころ。探偵行為(=覗き見)の動機って結局のところ「好奇心もしくは詮索癖」によるところが大きいのかもしれない。2012/06/30
じゅん
3
★★★☆☆バークリー宛の序文でまず笑う。事件に関しては、探偵役がここまで躍起になって捜査する必要性が感じられず、あまり引き込まれない。また明らかに客観性を欠いた語り手なので(推理もそうだが、特に人間関係とか)、ろくなオチにならんだろうと思っていたら、その趣向が明らかにされる結末にげらげら笑ってしまった。揶揄というより悪意が感じられる構成で、おたく的な人間も外部からは概ねこのように映っているのだろう。一種の諧謔趣味すら感じられる展開だが、肝心の事件に魅力がないので、道中は読んでてかなりしんどかった。2015/08/16