内容説明
怪奇映画の歴史は映画の誕生とともに始まった。『魔人ドラキュラ』『フランケンシュタイン』のユニヴァーサル・モンスター黄金時代、戦後ドライヴイン劇場の若者を楽しませたB級ホラー、『ゴジラ』と巨大怪獣ブーム、『サイコ』が切り開いた異常心理スリラー、SFXを駆使したホラーの新しい波…。本書は、怪奇・ホラー映画の歴史を、多くの図版資料と興味深いエピソードによってたどった怪奇映画史の決定版である。しかし、本書はたんなるホラー・ファン向けの本ではない。怪奇映画に登場する怪物たちには、同時代の大衆が抱いた恐れや不安が色濃く反映されている。著者は、戦争の悪夢、経済恐慌、中絶問題、世代の断絶、AIDSなど、スクリーンに投影された20世紀アメリカの悪夢を、怪奇映画の分析を通して読み解いていく。新しい映画論の幕開けを告げる刺激的エッセイ。
目次
幸福な時代のサイドショー
トッド・ブラウニングのアメリカ
「あなたはカリガリ博士となる」―モンスター、いかさま師、そしてモダニズム
恐怖とサーカス
怪物たちとリブライト
1931年―アメリカの混迷
怒れる村人たち
「おとうさんのことも良く知ってるわよ」―戦争の恐怖、パート2
ドライヴ・インは死霊と仲良し―50年代の恐怖映画
墓場でパーティ〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そら丸
8
ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフルでガース柳下先生がオススメしていた本。じっくり読ませてもらいました。非常に面白いです。文章も読みやすく図版も充実してます。ウェイン町山先生がアメリカの大学で映画の授業を受講した時の教科書だったとの事。羨ましい〜。★★★★★2012/12/17
K・J
5
この世にはたくさんの「沼」がある。映画もその沼の一つだ。怪奇映画を縦の時間軸や政治背景などと絡めてまとめてあるすばらしい本なのだが。私の教養がおいつかず、「共同創作」つまり、読書が上手くいかない。せめて、ヒッチコック、エクソシスト、無声映画をある程度こなし、大きな沼を50メートルほど泳げるようになってから、再びコーチであるこの本と向き合いたい。もう一つ、私は無知の沼にも入り込んでいる。こちらの方がいささか、映画の沼よりも深く、抜け出すのが大変そうだ。2015/10/21
Gen Kato
2
トッド・ブラウニングの経歴ってすごいな(初めて知った)。ロン・チャニーやベラ・ルゴシ、ボリス・カーロフあたりの怪奇映画が好きなので、楽しく読んだ。マイケル・ジャクソンまでもこの中に加えるか、とちょっと苦笑。2018/04/15
みなみくん
0
宇多丸さんのラジオで柳下毅一郎さんが推薦されていた本。返却予定日になってしまったので、最後はパラパラとしか読めなかった。しかし結構グイグイ読ませる。もっとホラー映画見てからちゃんと再読。2014/08/31
おしのび
0
読むのに時間がかかった。前半部分は、取り上げられている映画を観ていなかったということもあり、少し冗長に感じられた。後半、特に1950年以降になってからは、核の恐怖と巨大怪物映画、マイケル・ジャクソンとロン・チャニーなど、かなり独創的で興味深い論が展開されていて引き込まれた。その時々のアメリカ社会が抱いていた不安や問題点を映画と関連させて論じているので、アメリカ文化についての勉強にもなった。なかなかタフな本だったが、著者独特の語り口は呼んでいて面白かった。2011/11/28