内容説明
苦しみのうちに希望を、悲しみの中に慰めを。
感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
72
「小さなせむしの少女」や「五ひきのやもり」、「わがままな大男」のようなメルヘンで純粋な奇跡もあれば、「神の道化師」や「七短剣の聖女」のように神の視点からは奇跡だが、その対象者からはそうでもないという皮肉なものもあり。「沙漠のアントワーヌ」の悪魔から遣わされた豚への友情と報われない時の失望、それでも豚としての性を認めて共にいるアントワーヌに人間関係への不信を経てからの徳性を見出せる。また、「南京の基督」で自分に起きた奇跡から崇める金花さんに真実を告げなかった語り手の気遣いが素晴らしいのである2023/06/10
em
16
聖なる者が雲に乗り、水上を走る。貝から生まれ、鳥となり、人を漁る。懐かしい姿が顕現し、瀕死の女神は身を削る。天空の音楽が鳴り、命は拡散し、収縮する。人は規則も、関係性も、意味も持たない神の足跡をたどる。……かなりの粒ぞろい。このシリーズは毎回、編者と出版社の力量を感じる。「これがお前の世界なのだよ。お前に丁度あたり前の世界なのだよ。それよりもっとほんとうはこれがお前の中の景色なのだよ。」(宮沢賢治「マグノリアの木」)2018/01/25