感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
73
巻頭の地図を広げながら、イングランド南西部を浮浪者ジョン・ブラウンが歩いた道筋を辿ってみる。彼は歩いていた場所から遠く離れた所で発見されたのだ。そこに人気作家への剽窃疑惑が絡んでくる。スコットランド人のマクドナルド警部が農夫達と天候や種蒔きや羊の話をしている間、相棒のロンドン子ヴァーノンが半ば呆れ顔で見ている。このように時に退屈なほどのんびりした会話が作中で大きな要素を占めているのも悪くない。ついつい意外性にばかり目を向けてしまうけれど、こういうクラシックな本格物はミステリ本来の魅力を思い出させてくれる。2019/02/10
おか
36
やっぱり私って古い人間なんでしょうかね(笑)1930年代から1950年代に活躍した女流作家ロラックの世界にどっぷりと浸りました。懐かしい懐かしい懐かしい って私のどこかが言ってました(笑)刑事マクドナルド 渋くて頭良くてタフで 大好きなタイプ。でも いつの間にか 私のほうが年上になっちゃいました(笑)今回はBodyが???何体 ですかね、、、2024/03/01
bapaksejahtera
11
イングランド南西部デヴォンやコンウォルを舞台とする小説は初めて。巻頭の地図を参照しつつ読んだ。この全集で女性作家は珍しいが選択としては当たり。土地や住民の風俗を楽しみつつゆったりとした気分で読むことができて佳作だと思う。小説の舞台から離れた所で見つかった浮浪者の死体と彼が残したコメント。これとは別にロンドンの出版社では有名作家から送られた原稿には別作で記憶されるプロットが流用されていたという疑惑。この2つの疑念を元に、ロンドン警視庁の刑事とジャーナリストが休暇方々南西部に旅行に行くというスタートであった。2022/01/10
tomo6980
4
バークリーの批評精神を持った作品もいいけど、薬味だけを続けて食べているようなもので、まとめて読むものではないね。そこで、これ。地道な捜査にワトスン役(早々に負傷退場するけど)、探偵の推理は必ず正しく、軽い意外性。ただ、ここでも具体的な証拠がなく「なぜ、その推論のみが正しいのか」という疑問は出てくる。なぜか。おそらく読者の参加が前提だからだろう。探偵役を土俵に作者と読者が共同して正しい推理を作り上げているからですかね。そんなことをエーコも言っていた気がする。おっと、批評癖がついてしまった。2021/06/13
madhatter
3
盲点の生かし方は巧いが、犯人や真相は「無難」。だが、断片的に提示される情報や怪しい人物達が、きれいに一つにまとまっていく過程が楽しい。あとがきを参照するに、どうも魅力的な形態の事件を描くのが巧い作家のようで、他作品も読みたくなる。また、人間描写も巧緻だが、あまりそれを表に出さない作家でもあるらしい。個人的に本作では、犯人の狂気の描写の恐ろしさなどから言って、ここぞというときに巧みにそれを使える作家のように感じられた。2011/11/28