内容説明
今年の夏も少年は、その街にやってきた。しがないバンド・マンの父親がジャズを演奏して稼いでいる、海辺のリゾート地。街には彼女が住んでいる。年上で悪い噂の多い、謎めいた少女。少年は父親に反発しながらもジャズの魅力に目ざめ、少女にひかれてゆく―。みずみずしい筆致で揺れ動く少年の心情をとらえた表題作「チュニジアの夜」をはじめ、ひとりの労働者の絶望と死を硬質なイメージでつづる「最後の儀式」など、詩的な文体と鋭い感受性で人生の哀歓をあざやかにスケッチした全11篇。映画「クライングゲーム」で脚光を浴びたアイルランドの鬼才ニール・ジョーダンの短篇集。