内容説明
今年の夏も少年は、その街にやってきた。しがないバンド・マンの父親がジャズを演奏して稼いでいる、海辺のリゾート地。街には彼女が住んでいる。年上で悪い噂の多い、謎めいた少女。少年は父親に反発しながらもジャズの魅力に目ざめ、少女にひかれてゆく―。みずみずしい筆致で揺れ動く少年の心情をとらえた表題作「チュニジアの夜」をはじめ、ひとりの労働者の絶望と死を硬質なイメージでつづる「最後の儀式」など、詩的な文体と鋭い感受性で人生の哀歓をあざやかにスケッチした全11篇。映画「クライングゲーム」で脚光を浴びたアイルランドの鬼才ニール・ジョーダンの短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
水蛇
4
作風が幅広いところがおもしろい映画監督だけど、短編小説家としてもわりといろんな癖を使いわけてるんだなあ。肌にまとわりつくぺたぺたした暑い空気と土着の泥くささを漂わせながらも洗いたてのリネンみたいにさわやかな表題作で引き込まれた。初恋、うれしい以上に戸惑ったよね。自分が自分にのっとられたみたいで。2024/10/30
紺
1
2日に分けて読了。 読み始めは、一人称で進んでいくので誰目線なのか考えながら読むのが難しかったですが、2日目に読んでみるとたまたま読みやすいものが後半に集まっていたのか、相性が良かったのか分かりませんが、読んで疲れるということもなく詩的な表現を楽しみながら読むことができました。 文章から情景が浮かぶ小説だと感じました。2018/09/24
まっきaka谷林
1
情景を切り取ったような短編の数々。2010/08/11
akuragitatata
1
映画監督でもあるニール・ジョーダンの処女作。繰り返し現れるモチーフの中にあったたくさんの幻想は、孤独にさいなまれるアイルランドの幻想である。姉とロバを交換しようという男の誘いに一度のりながら、姉への暴力を認めらずに男を殴る少年の物語だである「砂」の、そんな暴力と倫理の中間点は、ジョイスやイェーツの通ってきた道を隙間からのぞき見るような深度。2010/06/24