内容説明
中世ウエールズの荒れ果てた島の修道院で、奇跡の井戸を訪れた巡礼たちが次々に姿を消した。調査のため派遣されたヴェーンを待っていたのは、人間の魂の所在を明らかにせんと禁断の研究にいそしむ修道院長の奇怪な情熱と、謎めいた島の人々だった。修道院の秘密の儀式、消えた死体の謎、探索がすすむにつれヴェーンは、聖と俗、生と死の混沌たる迷宮のなかに引き込まれていく…。深さと衝撃度において「薔薇の名前」以上と評された問題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kasim
29
変な話だった。中世ウェールズの孤島にある修道院で巡礼たちが次々と行方不明になり、司教から調査官が派遣される。というので当然『薔薇の名前』を連想するが、まったく違う。調査官の島への到着から始まっても、説明も内面描写もほぼなく、視点はふらふら、どの登場人物にも近づけない。哲学的なのか幻想的なのかも分からない文章で何が起きているのかストーリーの把握もままならず。魂はどこにあるのか、というテーマが魂・身体=人・家の比喩に託されて展開するのは分かるものの、もやもや感が残る読書でした。2020/01/05
Kouro-hou
11
何というか、詩人さんが主張したい事を守備範囲外のミステリ形式で表現したらこうなった、的な居心地の悪さのある作品。(褒めているつもり) 病気も治る、死人も甦るといういわれの「奇跡の井戸」の巡礼達が多数消息不明という事で調査に来た修道士とお供、怪しい修道院と雰囲気的だけは「薔薇の名前」に近いんですが、アレな人が最初にネタバレな所から出てきて秘密も何もあったもんじゃないとか、誰一人死因を気にしない(最後まで)、思わず本を落す終盤の超展開とか等々。不思議なモノを読みました、そんな感じです。文学の冒険、恐るべし。2013/11/10
刳森伸一
3
中世ヨーロッパの孤島を舞台にした短めの長編小説(中編小説)。奇蹟が起こるといわれている井戸のある孤島に赴く巡礼たちが戻って来ないという絶妙な設定を残念ながら十分には活かせなかったという印象がある。もう少しで傑作になれたかもしれない惜しい作品とも言えるかな。あと訳者の解釈はかなり強引な気がする。2014/12/08
ヒラタ
1
普通の推理小説かと思いきや あまり好きではないかな。2022/12/10
禾原
0
訳が悪いのかけっこう読みづらいように思う。読みづらさ以外では文学の冒険レーベルにしてはわりと普通の話という印象。死体がどこに消えるかの議論はするけれども巡礼が何故ことごとく死ぬのかについて議論をしないのが不思議。キリスト教にもう少し明るければもっと楽しく読めるのだろうか。それとも解説にある通り、これはクローンや脳科学への批判なのか。最後の魔術的技法は個人的にすごく好みなのだがオチ部分でいきなり走りすぎではないかと一抹の不安が。2011/05/01