内容説明
大都会の彼方、とある森のはずれに、此岸と彼岸とをつなぐ一軒の広大な屋敷「エッジウッド」が建っていた。そこでは現実と空想の世界が交錯し、一族は妖精の存在を信じていた。19XX年夏のある日、一人の青年スモーキィ、バーナブルが「エッジウッド」邸の主ドリンクウォーター博士の娘と婚礼を挙げるために屋敷を訪れた。「察するところ―君は、どんな世界に飛び込んでゆくのか承知していると思うが…」そこに暮らすことになったスモーキィは、やがて自分がその一族にまつわる謎と神秘の世界にからめとられ、長い長い物語のうちに引きずり込まれていることに気づきはじめた…。SF・ファンタジー界の異才ジョン・クロウリーの名を一躍高からしめた、壮大なスケールで描く現代の叙事詩。世界幻想文学大賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
H2A
11
上下2段組で2冊ある大作。内容はいたるところに仕掛けが隠れていそうな造り、しかも繊細で濃密な表現の連続で、この作品世界にしばし浸った。読者を選ぶ作品とはまさにこの作品こそそのもので、読み通すのは楽でもない。自分は選ばれていない気がする。文章は難しくないのだが、筋書きも含めてどう難しいかということは言い表す言葉を持ち合わせていないのが残念。しかし次巻が楽しみ。2025/04/28
志ん魚
7
この世ならざる妖精のような存在=「彼ら」と接触でき、特別な宿命を背負っているある血族の年代記。。。だと思うのだが、まだ秘密が多く、物語の輪郭は意図的な語りでぼかされている。また、彼らのアーミッシュのような暮らしとあいまって、物語の進行もかなりスロー。2段組でガッツリ読み応えがあるのだが、上巻は5世代に渡る血族の人物相関と数々の「フリ」だけで紙幅が尽きた感じ。正直じらされ度は頂点に達してるけど、マゾなので大丈夫。下巻もスローに読んでいこうと思います。2011/06/10
gu
6
『エンジン・サマー』を読んで以来読もうと思いながら10数年積んでいた。そういえばファンタジー版『百年の孤独』と形容される作品であったことを思い出した。家系の物語ということは生殖の物語であるのだよなと思った。物語の土地、現実の背後にある物語によって動かされている一族という設定には心惹かれるが今のところ『エンジン・サマー』の方が好き。2022/09/25
AR読書記録
5
“妖精物語版『百年の孤独』とも言うべき独創的なファンタジー巨篇”のはずなんですが、うーむ。あちらの世界の存在感が存外薄いというか、これくらいのシャーマニスティックな要素は女性にとってそれほど奇異なものでない(というイメージ)というか、いまいち読みながらの座りどころが決まらない。感想は最後まで読んでから、だろな。デイリィ・アリスと不思議の国のアリスとか、オーベロンといえばシェイクスピアとか、ちょいちょい連想するところはあるけど、どうなんでしょ。教養のあるひとに解説してもらいたいな。2015/09/09
ねむ
3
二段組みで上下巻という、コロナ禍でなまった読書筋を鍛え直すためのような読書。奇妙な屋敷に暮らす一族の過去やら妖精の国との接触やら、ファンタジーではあるのだけど、そこまで突飛なことは起きず今のところ淡々と言っていいぐらい順当に進んでおります。2の方で盛りあがるのかなー。2020/10/11