内容説明
追いつめられた青年が仕組んだ巧妙な殺人計画とその顛末を描く「烙印」、書簡体の本格短篇「偽悪病患者」等の傑作で、江戸川乱歩、甲賀三郎とならぶ人気を博した大下宇陀児は、犯罪の動機や事件に巻き込まれた人物の心理を深く掘り下げ、独自のロマンチック・リアリズムを確立した。奇抜な毒殺方法を扱った倒叙物の佳作「爪」、家庭内の悲劇を淡々と描いて感動を呼ぶ「灰人」、子供の視点で犯罪の進行をとらえた「毒」、掘出し物の骨董をめぐるユーモラスな「金色の獏」、グランギニョルふうの都市幻想譚「魔法街」に、戦後の傑作「不思議な母」「蛍」の全9篇。日本探偵小説界に新しい途を切り拓いた巨匠の代表作を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hirayama46
2
はじめての大下宇陀児。人の心理を精細に描くサスペンス調のミステリ短編を多く収録しています。なのでのけぞるようなサプライズや派手なトリックは薄いですが、緊張感のある作品が揃い踏みで、物語のバリエーションもなかなか豊富で楽しめました。特に兄妹の書簡でのやりとりで進行していく「偽悪病患者」はひねりの利いた展開で良く、犬がかわいいややほんわかした雰囲気の「灰人」も好ましかったです。2021/10/31
Hisashi Tokunaga
2
「大田文学ってどう」;「烙印」にD駅、温室村、多摩川河川が出て来る。農学士は河川で殺害されるのだ。D駅って「田園調布駅」だろうか?昭和10年初出。「金色の罠」の詐欺振りはブレヒト並みの効果?Amazonの記述が簡潔明瞭。2014/09/26
クランチ
2
江戸川乱歩と並ぶ人気を誇ったにもかかわらず、現在ではほとんど知られていない不遇の作家。この人がもっと遅く産まれていれば、松本清張みたいな社会派として今でも愛されていたかもしれない。2011/02/15
渋谷英男
0
昭和1桁の作品だが古さを感じなかった。人間の心理、生活は変わらないのかな。☆3.52017/02/07
analjustice
0
探偵小説黎明期の作品群を楽しむ。金色の獏が良いですね。2022/09/05