出版社内容情報
牧野信一 著
種村季弘 編
人形愛、望遠鏡、仮面――評価高まる牧野信一の名作。知的なユーモアとファンタジーが交錯する夢幻喜劇。恋愛小説の傑作「繰舟で往く家」他「痴酔記」「風流旅行」「鬼涙村」「バラルダ物語」等10篇。
著者紹介
種村季弘 (タネムラスエヒロ)
1933年~2004年。東京大学文学部独文科卒。國學院大學教授。著作集『種村季弘のネオ・ラビリントス』全8巻(河出書房新社)、訳書ホッケ『迷宮としての世界』美術出版社(共訳)、『怪奇・幻想・綺想文学集 種村季弘翻訳集成』(国書刊行会)などがある。
感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
67
表題作はある理学生のノートの内容から始まる。彼は自室から見える女性の生態に目が離せない。無防備な様子に女性の神秘を見出し、惑溺する男だが、対象者に接触し、好意を持たれると途端に熱が冷める。どうやら覗き見る事でしか彼の愛は継続しないのだ。だが、最後にこの物語は彼のノートを盗み見た語り手によるものと知らされる。窃視の入れ子。「夜の奇跡」は乱歩の「人でなしの恋」を連想するもぶった切られたかのようなラストに途方に暮れるばかり。半自伝とも言える「月あかり」の綽名でしか認識できない人間関係のある意味、密で希薄な様、2022/02/22