感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
前巻は眼球の収差(aberration)に逸脱と錯覚の可能性を垣間見せたが、本書はルネサンス以後の遠近法的世界観も解釈とする主張を、16-17世紀の歪曲(anamorphes)的遠近法を駆使した諸作品と共に紹介し、それ以前の西洋から中国までこの概念を拡大して別の遠近法によるバーション世界を示す。ホルバイン『大使たち』の歪んだ骸骨と光学や幾何学の関係を説き、速度を与え、極大極小化するこの力の遠近法の系列が、著者の依拠する歴史の前提である単一宇宙(ユニバース)すらもバージョン化させる潜在力を持つ点を仄めかす。2019/06/11
ぎんしょう
3
アナモルフォーズ芸術について、歴史と伝播、関わった人々などについて概観し、時代の中でどのような作用を持ったのか(数学の発展にどのように関係したか? 宗教とは?)がテンポよく概観される。しかし最後の「テクスト・アナモルフォーズ」だけ趣が異なり、如何に形而上学とアナモルフォーズを近づけるかということに苦心惨憺し、訳者高山宏の言葉を借りれば「捩じれに捩じれ」た様子となり、昂揚感すらある。高山宏の関連図書紹介も非常に良い。2011/10/21