感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
69
1975年の仏文学。同作家の「魔王」から続けて読む。千野帽子のガイドにもあったが、登場人物の一人、ゴミ処理王「ゴミのダンディ」の同性愛者アレキサンドル叔父の存在が光り、主人公たちである双子の話が消し飛んでしまう。後半の彼らたちのエピソードは読み飛ばしてしまった。この作家らしい象徴と思想に満ちた語りは相変わらずであるのだが、叔父のキャラが強烈すぎる。神話的寓話的想像力は初期大江を連想させた。また小説の可能性についてもいろいろ読書中に考えてしまった。強くはすすめないが良書。2017/11/01
松風
15
双子と「ゴミのダンディー」の物語を、時間と気象のモチーフがつないでいく。『八十日間世界一周』の解釈は興味深い。2016/02/20
mejiro
7
双子と単独者、気象、空間といった言葉を結ぶ、縦横無尽な想像力と複数の視点で、人間の関係を思索する。「ごみのダンディー」ことアレクサンドル叔父さんのタフでユニークなキャラは、双子の影が薄くなるほどの存在感。アウトサイダーだが堂々として王者の風格があり、彼の遍歴は双子の物語よりおもしろい。そのせいか、密閉した世界から逃げたジャンを追ってポールが世界中を旅する後半は、冗長に感じた。儚い夢から覚めるには時間が必要だったのかもしれない。2015/03/27
rinakko
3
何とも不思議な小説で、読んでいる間は終始してジャン=ポールが両極を成して作りだす双子の磁場に捕り込まれているみたいな心地だった。それはまた対峙する双生児という合わせ鏡が作りだす、特異な奥行き故の罠でもあった。快とも不快とも決め付けかねる、纏わりつくその感覚の中に身を置いて、双子の片われポールが時に尊大に語る〈卵形の愛〉について思いを馳せた。しかし何と言っても圧巻なのは、双生児の関係性〈卵形の愛〉を天空の現象〈メテオール〉につなげてしまう圧倒的な語りの技であることは言うまでもない。2010/07/11
栗山 陸
2
双生児と単独者の物語。フランスを舞台に少年時代の双子とその叔父の話が続く前半部と、失われた双子性を求め青年期の双子が離れ離れに世界をめぐる後半部。 / 以下、軽いツッコミ。家庭ごみを「KG」、双眼鏡のメーカを「フターゴ」と訳したのには何か意図があったのか……ww / 愛=欲望+優しさ、ってなんかバファリンみたいな愛やな、と2010/08/29