感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kero385
20
「先祖の女」はグリルパルツァーが最初に世に問うた戯曲で、27歳の彼を一夜にしてオーストリア演劇の寵児にしたとされる。1989年出版国書刊行会「ドイツロマン派全集」の中で翻訳された同戯曲を見つけて今回初めて読んだ。 まず題名。日本語訳ではあまり感じられないが、ドイツ語の原題“Ahnfrau“となると、たちまち不穏な語感を纏う。「アーンフラウ」という響きは、どこか原初的感情を揺さぶってくる。「先祖の女」は典型的な運命劇で劇全体のトーンを決定しているのは、不義の罪の報いで命を奪われた先祖の女の亡霊の登場である。2025/08/14
kero385
19
「呪縛の宴」と副題が付けられている国書刊行会「ドイツ・ロマン派全集 第17巻」は、「運命」によって悲劇を迎えるという共通のテーマで書かれた 5つの戯曲を収録している。これらは、19世紀の初頭に短い期間相次いで作られた「運命劇」というジャンルを形成しているという。 先にグリルパルツァー「先祖の女」のレヴューを書いたが、他の4篇について「先祖の女」と比較して論じてみたい。2025/08/17