感想・レビュー
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syaori
74
自分の子が一族をその揺籃の地エジプトへ導くという予言を受けたロマの王の娘イサベラ(ベラ)と皇太子時代のカール五世の恋を描く幻想小説。2人の恋に魔女や自惚屋のマンドラゴラ、ゴーレムなどの伝説から抜け出てきたようなものたちが絡み、混乱したとりとめのない夢のような、軽やかな恋愛譚が展開します。この虚妄の歴史には、俗世に縛られるカールと「軽々とした跳躍で」彼を超え一族の王として遥かなエジプトへ至るベラという対照的な二人の戴冠に象徴されるように、遥かなものへの志向が散りばめられていて、作者のポエジーを堪能しました。2024/03/08