内容説明
患者の語りに耳を傾け、患者を師としつつ、人間について思索する精神科医は、その治療実践を基礎に、人と人との絆の再生に向けた倫理的課題を担う。本書は、精神病理学の現場から発せられる、いま最も注目すべき臨床哲学のメッセージである。
目次
第1部 メランコリーと人と人との絆・宗教・信仰(人間におけるメランコリー性語りとパラノイア性語り;アウグスティヌスにおける抑うつと信仰・創造;カール・ヤスパースにおける精神病理学と哲学・哲学的信仰;シモーヌ・ヴェイユにおける摂食障碍と「無の思想」)
第2部 言語・所有・眼差し(統合失調症の現在―進化論に注目して;アスペルガー障碍における「言語世界への入場」、「現実との接触」;後期メルロ=ポンティとラカンにおける身体・眼差し・鏡)
第3部 「制度の哲学」と創造性・人間の倫理(現代医学からみるメルロ=ポンティの「制度の哲学」;生命力動と人格構造の視座からみる創造性;虚偽の精神病理と人間の生きる倫理)
著者等紹介
加藤敏[カトウサトシ]
1949年愛知県に生まれる。1975年3月東京医科歯科大学医学部卒業。1985~1986年ストラスブール大学医学部精神医学教室留学(フランス政府給費留学生)。現在、自治医科大学精神医学講座教授・科長(精神病理学専攻)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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石橋
0
個人的加藤敏祭り開催中。これまでの原著をまとめた感じの内容。まだまだ勉強不足でわからないところもあるけれど、「パラノイア性の語りとメランコリー性の語り」の区別や構造力動論に沿った解説はとても興味深くて、しっくり来た。もっと勉強したくなった。2011/12/04
onogi
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内容は置いておいて、自分にとっていい転機になった本。面白いと思う。でも難しいです。2011/03/30
こういちろう
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第5章までは最近では最も「耽読」できた本。ただ、第6章のアスペルガーについての著述は、恐らくその道の専門家にとってはやや一面的と映るのでは? アウグスティヌス、ヤスパース、シモーヌ=ウェイユに関する内容も予備知識なしでも読める。メルロ-ポンティとラカン章はやっとこさついて行けた。読後感これほど屈折した本は稀だ。2010/12/10
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