出版社内容情報
神仏分離という厳しい局面に立たされていた僧侶が三条教則や教育勅語にどのようにアプローチしたのか、ユニークな視点から分析。
三条教則とは、明治5年に維新政府が教導職という国民を教化する役目の一部の人たちに布達した「敬神愛国・天理人道・皇上奉戴朝旨遵守」から成る短いものです。のちの教育勅語と同じように「国民生活の日常における倫理的ガイドライン」といえるもので、余りに短いので国民教化の責務を負わされた教導職向けに解説書である衍義書(えんぎしょ)が神職や僧侶などによってそれぞれの立場から多く刊行されました。本書は、神仏分離という厳しい局面に立たされていた僧侶が三条教則や教育勅語にどのようにアプローチしたのかを、従来顧みられなかった衍義書に注目し、ユニークな視点から分析、従来の明治仏教史の通説とは異なる革新的見解を示します。また、江戸期に民間で道徳を説いていた石門心学者、明治期に禁教が解かれたキリスト者による希少な衍義書についても発掘、詳細に分析します。
第一編 三条教則と仏教僧―仏教僧の三条教則衍義書―
1章:教部省設置前における神道と仏教の相克
2章:仏教僧の三条教則衍義書をめぐって
3章:仏教僧による天神造化説批判
第二編 教育勅語と仏教僧―真宗僧の教育勅語衍義書―
1章:多田賢住および赤松連城の教育勅語衍義書をめぐって
2章:東陽円月の教育勅語衍義書をめぐって
3章:太田教尊の教育勅語衍義書をめぐって
4章:寺田福寿の教育勅語衍義書をめぐって
5章:土岐善静の教育勅語衍義書をめぐって
補章:真宗僧による教育勅語衍義書の諸類型
第三編 教育勅語と宗教者―石門心学者とキリスト者の教育勅語衍義書―
1章:明治期の石門心学の動向
2章:石門心学者川尻宝岑の教育勅語衍義書をめぐって
3章:キリスト者で唯一の教育勅語衍義書をめぐって
内容説明
明治仏教史の通説をくつがえす。明治国家による二つの「国民の倫理的ガイドライン」を宗教者はどう捉えたのか。僧侶・心学者・キリスト者の衍義書に焦点を当て意外な実態を解明する。
目次
第1編 三条教則と仏教僧―仏教僧の三条教則衍義書(教部省設置前における神道と仏教の相克;仏教僧の三条教則衍義書をめぐって;仏教僧による天神造化説批判)
第2編 教育勅語と仏教僧―真宗僧の教育勅語衍義書(多田賢住および赤松連城の教育勅語衍義書をめぐって;東陽円月の教育勅語衍義書をめぐって;太田教尊の教育勅語衍義書をめぐって;寺田福寿の教育勅語衍義書をめぐって;土岐善静の教育勅語衍義書をめぐって;真宗僧による教育勅語衍義書の諸類型)
第3編 教育勅語と宗教者―石門心学者とキリスト者の教育勅語衍義書(明治期の石門心学の動向;石門心学者川尻宝岑の教育勅語衍義書をめぐって;キリスト者で唯一の教育勅語衍義書をめぐって)
著者等紹介
三宅守常[ミヤケモリツネ]
昭和23年、京都市生まれ。昭和46年、日本大学文理学部哲学科卒業、昭和51年、日本大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程単位課程修了、日本大学教育制度研究所・精神文化研究所助手、日本大学医学部専任講師を経て日本大学医学部教授(哲学・倫理学分野)。(この間、以下を兼任、(財)大倉精神文化研究所研究員、神道部門のち倫理教育部門主任、昭和61年度~平成13年度。國學院大學客員教授、平成19年度~同23年度)。現在、日本大学医学部研究所教授(総合科学研究所)。博士(宗教学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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