内容説明
カントの思想は現代に開かれている。ヴィーコ、ガーダマー、アーレント、ニーチェ、アーペルらの議論と対比して批判哲学を解釈学的観点から考察し、カント思想が孕むダイナミズムを鮮かに描き出す。現代の知的状況を批判哲学という鏡に照らし出す画期的な労作。
目次
第1章 トポス論の展開
第2章 カントの共通感覚論
第3章 遠近法主義の哲学
第4章 超越論的場所論の試み
第5章 普遍的幸福論の射程
第6章 純粋実践理性の図式論
第7章 歴史哲学と最高善の問題
第8章 カントの大学論
結語 超越論的哲学と解釈学の間
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
11
カント専門家のための本で自分の手には余った。どうやらデカルトからカントに至る近代哲学の伝統では他者が入り込む余地がない。真理は意識の内部でしか得られないから、むしろ外部からの影響を遮断しないとならない。であるから、「対話」は自己との対話しかありえない。ところが、ぼくらは身体をもって時空のなかに生きている。他者の間で生きている。同じものでもそれぞれの立場から見ているから他者が他者なんであって、そうであるから対話も成り立つ。それを否定する哲学は対話の必要をも否定しかねない。で、道徳的な実践も独りよがりになる。2021/06/28