内容説明
エルピーダメモリ1社を残してDRAMから撤退した日本半導体産業。1980年代半ばに世界を制した技術と品質は、いまや不況のたびに膨大な赤字を生み出す元凶と化した。一体、なぜ、こんなことになってしまったのか?半導体産業の技術者として出発した社会科学者が、今、そのすべてを解明する。
目次
第1章 過剰技術、過剰品質
第2章 イノベーションのジレンマ
第3章 海外高収益メーカーとの違い
第4章 自ら陥った4つのジレンマ
第5章 装置メーカーとの共退化現象
第6章 ネジクギになった半導体
著者等紹介
湯之上隆[ユノガミタカシ]
1961年生まれ、静岡県出身。1987年、京都大学大学院(修士課程原子核工学専攻)を卒業後、日立製作所に入社。以後16年間にわたり、中央研究所、半導体事業部、デバイス開発センター、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて、半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に、京都大学より工学博士。2003年~2008年にかけ、同志社大学の技術・企業・国際競争力研究センターにて半導体産業の社会科学研究を推進。長岡技術科学大学客員教授も務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MAT-TUN
8
クリステンセン教授のいう「イノベーションのジレンマ」の好例だと思う。ただし高機能追求路線で既存顧客維持と、低機能そこそこ品質路線で新市場発掘のジレンマを日本の半導体メーカーがそもそも感じていない(少なくとも具体的企業行動に現れていない)ようで、事態はより深刻だと思われる。病気は①正しく、②自覚、しないと治療できないと思う。日本半導体メーカーはローコスト型破壊を台湾韓国企業から受け、致命的な打撃を受けている。また、合弁会社がうまくいかない理由も興味深い。日本で産学連携の成功事例が乏しいことも説明がつきそう。2013/03/20
しろくまZ
6
「先鋭化してしまって自分の専門領域しか見えてない要素技術者、性能しか頭にないインテグレーション技術者、デバイス・コストなど考えたこともない設計者、マネジメント能力のないマネージャー、経営能力のない経営者」 日本の半導体メーカーが組織内で”すり合わせ”が出来ず、無様な敗戦、撤退を余儀なくされたのは、上記のような組織の現状があったからだと本文中にあった。的確な指摘だと心から思う。また、本文中にこれらの問題に対する対策が述べられていたが、個人的には同じ過ちを日本企業は繰り返すのではないかと悲観している。2020/08/20
人生ゴルディアス
4
シャープが鴻海に買われ、買われた瞬間にV字回復した。一方NECはソフトウェアエンジニアの不足をハードウェアエンジニアで補おうとしていたとか報じられ、731部隊の人間と馬の血を交換しようとした実験かな?とか、東芝の粉飾決算とか、本書を読むと、本書著者のお怒りは故無きことではなかったんだなと思わざるを得ない。刊行当時にこの本読んでたら、大袈裟な、とか思ったかもだけど、本当に経営層が無能だったのだ。また、半導体業界の歴史は全く知らなかったので、大まかに知れて良かった。著者のお怒りがかなり濃いけど、良い本でした。2019/03/22
takam
4
Kindle版を読んだ。日本の半導体業界は恐竜のように時代に適応できずに敗れたと読了後に思う。日本人は手先と技術を芸にまで昇華できるほどの繊細さを持つものの、戦略レベルや全体的な計画を無視して時代錯誤の方向に突き進む癖を持っている。本書ではこの宿痾によって日本の半導体業界が低迷し、崩壊したと結論づけている。「失敗の本質」に描かれる日本の組織そのものの負けパターンである。私はこの宿痾を認識し、克服できれば、必ず閉塞感を打破できると信じている。2019/03/07
A.Sakurai
3
著者の最近作が評判良いのでその元になった本作を手に取る。主題である日本の半導体産業の敗因は高性能、高機能にこだわり過ぎによる収益力の低さとする。これはほぼ定説となっている。問題はその理由なんだが、本書では半導体産業の成功経験に求める。高性能DRAMで成長した経験から、高性能高機能に体制が最適化され、環境が変わっても体制が変われなかった。その変われなかった実例を自分の体験を含めて次々に上げて行く。納得のいく説明だ。★後半は半導体業界の見通しになるが、こちらは今の時点で見ると外れている部分も多い。予測は難しい2014/02/07
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