内容説明
転校を控えた高校2年の夏休み、始発電車に乗って学校に向かった少年は、駅のホームで同じ学校の制服を着た少女と出会った。あんな子、乗ってたか?そもそも、この駅で降りたのは自分ひとりだけだったはずだ―。(「始発電車の彼女」)田舎町の小さな駅のホームにあらわれる制服姿の少女。見える人にしか見えない彼女が、出会った本人も忘れたい、心の奥に隠した本当の声を聞く。そのとき…。あり得たかもしれない自分。二度と帰れないあの日。驚きと感動のラストに、青春の残酷さと美しさを知る。
著者等紹介
水沢秋生[ミズサワアキオ]
兵庫県生まれ。出版社勤務などを経てフリーライターに。2012年、第7回新潮エンターテインメント大賞を受賞した『ゴールデンラッキービートルの伝説』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダミアン4号
65
時計台がシンボルの高校から、ほど近い場所にある田舎町の駅…そのホームにオレンジ色の髪留めをしたセーラー服の少女がたたずんでいるという噂がある。彼女は“出会える人”だけが“出会える”という不思議な存在…幽霊?イタズラ?それとも…人生の岐路で…過去の出来事に囚われて…先に進む事が出来ず立ち止まってしまった人達の背中をそっと押す様に彼女は話しかける…今日は明日の為でも遠い未来の為でもなく…今やらないと、きっと後悔するよ!人生の小さな再出発…最終章で明かされた彼女の正体は…人生は続いていく…幸せになって欲しいな…2020/01/04
ぶんこ
46
一寸先は闇とはいわないまでも、何が起こるかわからない。だからこそ後悔のないように、やるべきことはやっておこう。そう思わせる。「お母さんのシチュー」は実母の過干渉、「黄金時代」は継父の気遣いが印象的。最後の2章でホームに現れる女子高生の幽霊の正体があかされるのですが、特に最後の章が切なすぎます。殺された子も、約束に遅れた自分のせいでと苦しむ子も、どちらも悪くないだけに犯人が憎い。それにしても何故犯人はその時間にあの駅前に彼女がいるとわかったのかが謎のまま。2021/04/11
茉莉花
38
田舎町の小さな駅のホームにあらわれる制服姿の少女。見える人にしか見えない彼女が、出会った本人も忘れたい、心の奥に隠した本当の声を聞く。そのとき…。青春の残酷さと美しさを描く。2020/07/20
assam2005
31
「どんな道に進んでも、後悔は絶対あるから」という台詞。自分の選択しなかった未来について考えてもどうしょうもないと思うのは、私が年を取ったからか。若いときならそう考えることもあったな。でも、その時点で本能的に最善と思われる選択をしてきたのだから、それが最善の結果だと、今の年齢ならそう考える。それでもやりきれないのは、取り返しのつかない人の命が絡んでいるからか。この一瞬一瞬の積み重ねが、本人の落ち度なくいきなり断たれることの理不尽さが後悔の種をまく。こういう結末は言葉が出ない。2018/08/06
ぺんぎん
30
後悔を抱える人達の視点で語られる連作短編。1つ1つモヤっとするものが残るがそういうテーマなんだからこれでいいのかな。終わらせ方が個人的にはアレなんだけどそこまでは独特の切ない雰囲気がいい。2015/04/21