内容説明
片田舎で、特にやりたいこともなくて、成績もよくなくて、モテない高校生。無理矢理入れられた人力飛行機部も成果が出ず、顧問の教師は職員室でハブられていた。一方、東アジア情勢は混迷し、政府は場当たり的に戦闘準備を進める気配。あっちもこっちも行き止まり。それでも、飛んでみるしか、ないやないか。―。
著者等紹介
雀野日名子[スズメノヒナコ]
福井県生まれ。大阪外語大学卒。2007年、「あちん」で第2回『幽』怪談文学賞短編部門大賞を受賞。’08年、「トンコ」で第15回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nyanco
37
「鳥人間コンテスト」を目指す、高校生青春モノ・・・と思って読み始めたのですが徐々にキナ臭い話に。俊春、エースケのバカコンビの底抜けの明るさと、どんどんとキナ臭く時代が陰に動いていく対比が凄い。ホラーでデビューした雀野さんですが、「太陽おばば」「山本くんの怪難」となかなかヒット作に恵まれないように感じていたのですが、一気に突き抜けましたね。東アジア情勢、あまりにもタイムリーなので、日本が迷走していく様子にぞっとするものがありました。続→2012/08/18
おかむー
36
予備知識皆無で初読みの作家さん。『可もなし不可もなし』。人類滅亡を控えた世界でも人力飛行機を飛ばすために奔走する物語…かと思って読み始めたら、維○の橋○がモデルのタカ派首相が引き起す戦争と、主人公俊晴がイヤイヤ始めた人力飛行機と超能力少女が日本滅亡を阻止するカギとなるという、苦笑まじりにいい意味で裏切ってくれた展開。中盤までの巻き込まれ型スポコンと、後半の危険に突き進む世の中と始まる戦争というあまりの温度の違い、そして結末を見せないラストが余韻ともモヤモヤとも。なんだか善し悪しの判断が難しい作品でしたとさ2014/09/12
むつぞー
17
「鳥人間コンテスト」は大好きなので、飛行機をつくる部分だけでも楽しく読むことができます。 この青春モノとしての物語と、だんだんきな臭くなっていく時代との掛け合わせがいいです。 いやがおうにも時代に巻き込まれていく様子は、絵空事と笑えない怖さがあります。 いつの時代も、どこの国であっても、人々は平和な明日を考えて生きていると思うのに…。 素直な人力飛行機にかける青春モノであっても良かったのにとラストに思ってしまいました。 そう思わせてしまう所がこの作品の良い所でもあるのではないでしょうか。2012/10/03
MarsAttacks!
15
鳥人間と聞くと、あの琵琶湖の映像を思い浮かべます。この物語も鳥人間コンテストを、目指す青春ものと思っていたのですが・・・。最初主人公とその幼馴染の馬鹿コンビの言動と行動が好きになれず、イライラしながら読んでいたのですが、段々と不穏になってくる日本の情勢と、それに巻き込まれていく主人公たち、物語の世界に引き込まれていきました。そしたら今度は、あまりにもタイムリーなネタに、今後の日本情勢と重ねてしまい不安になってきました。そしてあの幕の引き方、かなり印象に残る一冊です。2012/09/29
もえたく
11
何事にもヤル気がない高校生たちが鳥人間コンテストを通して成長する青春小説。かと思っていたら、その時代背景が凄い。北がミサイルを発射、日本は強気な首相が自衛軍で対抗、高校生たちの住んでいる日本海のプラントのある町も巻き込まれていくという近未来のディストピアな設定。読んでいて鬱鬱とした気分になりましたが、読むのを止められないくらい引き込まれました。著者の他の作品も読んでみたいです。2016/02/10