内容説明
突然に妻を失って、生前ありがとうの言葉ひとつかけてやれなかったことが悔やまれる男。老人クラブの絵画同好会で知り合った女性は、親身に彼の話を聞いてくれた。しかし、彼女自身には、抱えきれないものがあった…。
著者等紹介
盛田隆二[モリタリュウジ]
1954年東京都生まれ。明治大学政治経済学部卒業。情報誌「ぴあ」編集者の傍ら、85年「夜よりも長い夢」が早稲田文学新人賞入選。96年から作家専業に。『夜の果てまで』は、30万部を超えるベストセラーに。現代人の居場所探しの旅をリアリズムで描く。『二人静』(第一回「Twitter文学賞」国内)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mazda
32
この本の感想を一言で言うなら、「切ない」でしょうか?年をとっても、体が動かなくても、昔と同じように恋をし、嫉妬し、体を触れあいたいと思う、そんな当たり前のことを改めて思い知らされました。やがて体が麻痺し思ったように動けなくなってしまったときに、お日様の元で日向ぼっこするような、ほんの些細なことでも感動できるんだな、ということもその通りだと思います。どんな人にも平等にやってくる「老い」。私たちは避けて通れないその現実に対して、今辛い思いをしている人たちにそっと寄り添える優しさが必要なのかも知れません。2014/12/22
シェラ
13
礼二郎が「老い」に向かっていく様が、両親と重なり感慨深いものがありました。幸子との恋愛を手放しで喜べない息子夫婦の気持ちも分かりますが、支え合える誰かがいる幸せを感じました。笑顔でいられる1分1秒の大切さが身につまされました。2012/02/20
らなん
9
70歳くらいの方の恋愛、病気などリアルに描かれている。今の自分は、夫と離れてしまうことは余り考えていなかったけど、同時に亡くなることは稀なので、いずれはどちらか片方が一人で生き続けるのだな。で、その時この本では、また別の相方を求める人達がいて、その心情、子供達との関係などリアルすぎて怖いくらいだった。今は、まだ子育てもあるし、仕事もあるしだけど、どうなるんだろう。2019/06/12
ひろさん
9
死様をテーマにした本の3冊目です。これまで読んだ本には死様をテーマにしていた割に元気な老人が出てきて、それぞれの末路を思うという程度でした。しかしこの本は老年の独り身の男性の恋愛、その後病に倒れた後までと、死に際に近いところまで書かれていて、高齢化社会で誰もが避けて通れない現実を知らされます。おかげで後半は読みたくないけどラストが気になって読むしかない状態でした。目を背けたくなりますね。 2018/06/13
まこっぴ
7
どのように死んでいくかということは、どのように生きるかということ。「明日の記憶」で若年性の認知症を見てとても怖くなったことを思い出しました。呆けていく過程を受け入れなければならない苦しさやつらさは、筆舌に尽くしがたいものだと思います。話としては、幸子さんのあまりに波乱万丈な人生にちょっと引いてしまいましたが、あらためて”老い””家族””生きがい”などを考えるいい機会になりました。2011/09/05