内容説明
金のねえ奴は、野たれ死ね。それがこの街の掟だ。―私立大学の3年生、時枝修はある日、学費の未払いを理由に大学を除籍される。同時に両親からの仕送りが途絶え、実家との連絡もつかなくなった。なにが起きたのかわからぬまま、修はやむなく自活をはじめるが…夢をかなえるはずの大都会には、底なしの貧困と孤独の荒野が広がっていた。平凡な大学生の転落と放浪を通じて、格差社会の傷口をえぐる青春巨篇。
著者等紹介
福澤徹三[フクザワテツゾウ]
1962年福岡県生まれ。2000年、『幻日』(文庫化の際『再生ボタン』と改題)でデビュー。磨きあげられた端正な文体で、怪談作家として独自の地位を築く。アウトロー小説でも評価が高く、’08年には『すじぼり』で第10回大藪春彦賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タックン
80
題名に惹かれて借りた本。東京近郊でギリギリの学生時代を送ったので感慨深かった。ただし主人公があまりにも優柔不断で浅はかだったのでなるべくして落ちたと感じた・・・・それが逆に身近に底辺に落ちていってしまう恐怖に繋がってる。全体としては題名以上には暗い感じだったな。どちらかというと成長物語かな? 2014/07/05
taiko
77
突然の両親の失踪で、大学を除籍され、住まいも追い出されることになった修。手持ちのお金も底をつき始め、バイトを探し住む場所を求め、東京都下で難民のような生活を送っていく。世間知らずで、考えの甘い大学生のあまりの転落っぷりに、興味半分だったのも束の間、救いのなさにやり切れない気分になりました。行き着くところまで行ってしまった感のある修でしたが、この経験がこの先の彼の大きな糧になるかもしれない終わり方に、とりあえず一安心。小説の中の話として、興味半分で読みましたが、身近にもあるなのでしょうか。だとしたら怖いな。2016/01/17
ゆみねこ
76
東京の私大3年生の時枝修は、ある日突然学費の未払いを理由に大学を除籍になる。敷金礼金なしの家具付きマンションも追い出され、生活のすべてを失う。仕事を探し自立しようともがけばもがくほど陥る貧困の暮らし。修の無知といい加減さにイライラしながらも、その先が気になって一気に読了しました。ホストクラブの仕組みやら、日雇労働、ホームレスの暮らし等々、格差社会の闇が見えたようで恐ろしくなりました。最後は修の成長がうかがわれ読後感は悪くなかったです。2015/10/03
鳳
74
イライラの連続。世の中、そんなに甘くないよと思いながら、私の知らない世界が楽しかった。私が同じ立場ならと考えたら、ゾッとしました。親に感謝です。ラスト、「仕事なら、なんなだってできるさ」に、ほっとさせられました。まだ、若いのだから。2015/12/03
みのゆかパパ@ぼちぼち読んでます
70
両親からの仕送りが途絶えたことを機に大学を除籍され、アパートからも追い出され、貧困生活へと陥っていく青年の姿を描いた物語。一度転がり落ちるとはい上がることが困難な格差社会の現実が、しかも平凡な生活を一歩踏み外しただけのところにあることがヒヤリと迫ってくる。そんな“底辺”の世界に、現実から目をそらし場当たり的な行動を重ねることでハマっていく主人公には同情できない面もあったが、だからといって自分が同じ立場なら違っていたとは言い切れないところに、今の社会の危うさがあるのだろう。多くの人に読んでほしい力作である。2014/03/22