内容説明
「冤罪・誤判」と言われる二つの殺人事件を通して描かれる、人間・社会のあるべき姿。人生観、社会観、世界観ないし現実認識、大西文学の現到達点。
著者等紹介
大西巨人[オオニシキョジン]
小説家、批評家。1919年、福岡市生まれ。九州帝国大学法文学部中退。毎日新聞西部本社勤務を経て、対馬要塞重砲兵聯隊の一員として敗戦を迎える。戦後、福岡で雑誌「文化展望」の編集に携わり、「近代文学」第二次同人となる。48年、『精神の氷点』『白日の序曲』を発表。52年に上京。以後幅広い創作活動を続けている。俗情との結託を排した思考、及び厳格かつ論理的な文章が創造する独自の世界は、日本文学の枠に止まらない。ほぼ四半世紀を費やして完成した4700枚の大長編小説『神聖喜劇』は、現代日本文学の金字塔と称される。「群像」創刊50周年企画(私の選ぶ戦後の文学ベスト3アンケート―文芸評論家51名による)では、『神聖喜劇』が埴谷雄高の『死霊』に次いで第2位、作家部門でも第6位
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感想・レビュー
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GaGa
32
ああ難解。ひたすら、ただただ難解。こういう作品は理解するより、噛みしめてしかるべきだが、それでも難解。なのに読んで損をしたとはまるで思えない不思議。大西巨人氏は今年で92歳。この作品は97年起筆で03年に書き上げられたとのこと。もう少し人生経験を積んでから再読いたします。2011/11/02
空箱零士
2
★★★☆ 記憶喪失時の知人・丹生哲彦と再会した麻田は己が松浦県の塾講師だったことを知り似非冤罪事件に関わることになるが、双葉子と関係を思い出した麻田は……。架空論文「歴史偽造の罪」を元に己の記憶と向き合い事件も記憶を正確に立証すべく努める。氏らしい理路整然な理論だが隙のなさが話の緊張感を薄めた。そして「漠たる虚空」。真なる根源を求めた時に人は虚空に消えざるを得ないか? テーマ追求の姿勢は頷けるが物語の妥当性は微妙(『生の根源的問題』の発端)。結末は正しすぎる作家である氏の臨界点にも見えたのは流石に過言か。2013/02/24
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0
都度都度、それまでの行動を箇条書きにまとめてあったので、話しをしっかりと掴むことができた。実に楽しかった。終わり方が特に良い。2015/12/18