内容説明
それは、きらめく銀色の刃が、凄惨な切腹場を果敢ない幻影に包みこみ、誰もが息を呑んで言葉を失くし、切腹場の一切の物音がかき消えた、厳かにすら感じられる一瞬だった。十八歳の春、首斬人としての生業を継いだ男の極致。
著者等紹介
辻堂魁[ツジドウカイ]
1948年高知県生まれ。出版社勤務を経て本格的に執筆業に入る。迫真の剣戟と人間の機微をこまやかに描く作風でいくつもの人気シリーズをもつ。大ベストセラー「風の市兵衛」シリーズで第5回歴史時代作家クラブ賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
131
介錯人・別所龍玄シリーズの第4弾になるのかな。連作4話。3話までは介錯人としての話だが最後の『発頭人狩り』はちょっと違う。それでもそこにあるのは生と死だ。龍玄の纏う空気感が好い。キツイ生業だからこそ夫婦の、親子の、家族の会話が暖かくてきっと次も読んじゃう。2023/07/15
やま
57
首きり人である別所龍玄の活躍の物語です。江戸は、本郷の無縁坂の講安寺門前に住まいし介錯人・別所一門を名乗る一刀流の遣いて龍玄は、町奉行所の牢屋敷で犯罪者の首を斬る「首きり人」を生業としている。首を斬るときに、名刀などの切れ味を試す「お試し御用」を行ない。そして、武士の切腹の時に立ち合い介錯をする「介錯人」でもある。2023/09/09
真理そら
56
「発頭人狩り」はなんとなく風の市兵衛さんっぽかった気がしないでもない。そういえば龍玄さんは『風の~』シリーズに登場していた。介錯人という職業柄かこのシリーズは理不尽にも思える武士の姿が描かれる。「弥右衛門」が一番好きかな、生家で武士のままでいても「厄介」になるしかない武家の次男三男が求めたささやかな幸せ…叶って欲しかった。2023/08/27
pohcho
52
介錯人・別所龍玄シリーズ第四弾。今回もいろいろ理不尽というか、江戸時代の武士の生きづらさが伝わってくるような内容だったが、龍玄の家族だけはいつもながら穏やかで美しかった。杏子ちゃんが可愛くて癒やし。2023/07/27
はつばあば
51
「介錯人別所龍玄始末」の表紙の絵と違い、なんともはかなくて庇護欲をそそりますが、騙されてはいけません。彼こそが介錯人龍玄その人なんです。最新版4巻目。介錯人ならばこその家族への愛あふれた日常がところどころに滲む。人って家族が当たり前に隣にいることに慣れていて、いなくなって初めて淋しさを覚え、取り乱す。死を賜った武士の死様、不浄の首切り人と恐れられる優男龍玄の矜持。言いなりになっていた龍玄が「発頭人狩り」で自分の思いで刀を抜いたこの巻からもっと人情味豊かな龍玄が登場してくれるのを期待して1巻から再読します2024/03/02