内容説明
日常から浮遊する、5つの奇妙な謎と解決。ドレスをズタズタにした犯人は、どこから来てどこへ逃げた?「幸せという小鳥たち、希望という鳴き声」。虫食いだらけの原稿を、前後の文章から推理して完全修復!?「フーダニット・リセプション名探偵粍島桁郎、虫に食われる」。夫は殺したはずなのに!なぜここに!?「動くはずのない死体」。超常的な力で殺人罪から逃れる男VS.熱血刑事「悪運が来たりて笛を吹く」。瞬間移動能力者が起こした密室殺人。読者への挑戦状付き!「ロックトルーム・ブギーマン」。
著者等紹介
森川智喜[モリカワトモキ]
1984年生まれ。京都大学理学部卒業。京都大学大学院理学研究科修士課程修了。京都大学推理小説研究会出身。2010年『キャットフード 名探偵三途川理と注文の多い館の殺人』でデビュー。’14年『スノーホワイト 名探偵三途川理と少女の鏡は千の目を持つ』で第14回本格ミステリ大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
130
この作者はどんな投球も可能な万能型ピッチャーか。「小鳥たち」が剛速球のストレートなら「フーダニット」では打たせて取るフライボールを決め、表題作で極めつけのナックルボールを披露したかと思えば「悪運」は内外角を巧みに攻め分け、「ブギーマン」はサウスポーの変化球で翻弄する。各作品とも「こう来たか」と思わせるうまさが光り面白く読ませるが、先発完投型のパワーピッチャーというより最終回に登板するリリーフ陣のイメージだ。技巧を楽しむプロの目には楽しめても、メガホンを持って必死に応援するファンには物足りないのではないか。2023/09/21
yukaring
66
独特なテイストのトリッキーな短編集。創立2周年パーティーで着るドレスをズタズタにされた女社長。犯人はどこから来てどこに逃げたのか?『幸せという小鳥たち』推理作家の原稿をコーヒーでダメにしてしまった高校生2人組が虫食い部分を推理して修復する『フーダニット・リセプション』夫を殺してしまった!でも何でここにいるの?もしかして動いた?『動くはずのない死体』瞬間移動能力者が起こす密室殺人『ロックトルームブギーマン』などどこまでもロジカル、そしてブラックユーモアも効いた短編5編。奇妙な謎と解決編を楽しめる1冊だった。2023/06/11
雪紫
55
5分で傷付けられたパーティードレス、うっかりで駄目にした解決編の手書き原稿を考えたり、突発的に殺した夫の遺体が動いたり、標的を死なせた路上強盗に悪運が舞い降りたり、瞬間移動で密室殺人が成立したり、バラエティー豊かな短編集。手書き原稿のひっくり返し、「フーダニット・リセプション」と悪運を描く「悪運が来たりて笛を吹く」が好み。・・・奴らフリーダム過ぎる。でもそれ差し引いてもこうして見るとミステリというジャンル自体がやっぱりフリーダム。2024/05/17
オーウェン
55
5編の短編ミステリだが、どんでん返しやブラックジョークに、読者への挑戦状などバラエティに富んだ中身。 「フーダニット・リセプション」 コーヒーをこぼしてしまい、ミステリの原稿を修復していくという手法。 目新しい虫食いによってミステリを完成させていくという形は楽しめる。 表題作はそのまま、夫を殺したはずの妻だが、なぜか死体が動いて部屋にいるというもの。 あるトリックが仕掛けられているが、終盤までは気付かなかった。 読者への挑戦状がある最後の話。 やりたいことは分かるが凝り過ぎていて、結末に納得がいかない。2023/08/13
aquamarine
52
実は初読み作家さん。ノンシリーズの短編集。ドレスをダメにした犯人を探す一話目こそさらりと読んだが、ミステリの解答編のみの虫喰い原稿を前後の文章から高校生たちが修復する2話目はびっくりで、数学的理詰めがとても好み。表題作はちょっとずるいかも。悪運のついている殺人犯の話は落とし方が納得だし、特殊能力をうまく使った最終話は西澤作品を彷彿とさせ、挑戦状付きの綺麗なミステリに思わずニヤリ。楽しかった!気になりながらもタイミングを逸して著者の過去作を読めていなかったが、シリーズ含めてぜひ読んでみたい。2023/07/05