内容説明
「こんなはずじゃなかった」。進路を断たれた高校生、恋人と別れたばかりの青年、ワンオペで初めての育児に励む女性…。市役所に開設された「2020こころの相談室」に持ち込まれたのは、切実な悩みと誰かに気づいてもらいたい想い、そして、誰にも知られたくない秘密。あなたなりの答えを見つけられるよう、二人のカウンセラーが推理します。最注目の気鋭がストレスフルな現代に贈る、あたたかなミステリー。
著者等紹介
辻堂ゆめ[ツジドウユメ]
1992年神奈川県生まれ。東京大学法学部卒。2015年、第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し、『いなくなった私へ』でデビュー。2021年、『十の輪をくぐる』が第42回吉川英治文学新人賞候補となる。’22年、『トリカゴ』で第24回大藪春彦賞を受賞。同作は第75回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)の候補にもなる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
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さてさて
522
『新型コロナウイルス感染症流行の状況を受け、このたび市役所三階に、「2020こころの相談室」を開設することになりました』。そんな『市民のみなさま』に向けたお知らせの先に開設された『こころの相談室』を訪れる五人の主人公たちの悩み苦しみが描かれるこの作品。そこには、辻堂さんならではの一工夫が光る物語の姿がありました。コロナ禍初期の世の中の様子が落とし込まれたこの作品。そんな世の中に数多の悩み苦しみがあったことを改めて思うこの作品。『こころの相談室』の役割をミステリー小説として上手く用いた素晴らしい作品でした。2024/10/06
パトラッシュ
511
新型コロナで行動制限が一番厳しかった2020年は、常識が覆され人生が狂ってしまった人も多かった。そんなコロナに傷ついた人びとが吐露した不安や苛立ちを聞いた市役所の心理カウンセラーが、そこに含まれる矛盾や嘘を見抜く「ココロの推理」がテーマとなる。『黒後家蜘蛛の会』の設定を相談者の生活や苦しみを叙述トリックを交えて描くことでマイナー調にアレンジし、安楽椅子探偵物と組み合わされたコージーミステリが成立するかを試しているようだ。そのつもりで読めば巧みな連作だが、話が小粒すぎると不満に感じる向きがあるかもしれない。2023/04/19
starbro
505
辻堂 ゆめ、5作目です。2020心の相談室連作短編集、人は市役所の窓口でも嘘をついたり、盛ったりするものでしょうか❓ https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/97843349150562023/03/08
松本ぼんぼん
356
最近流行りの青山美智子さん風の短編が繋がるパターン。本作は一味違っていて、臨床心理士の晴川さんの謎解きが冴え渡っています。読後、とても心地よかったです。十分に続編が期待できそうです。2023/03/13
ひめか*
307
コロナ禍でいろんな悩みを抱えた人々が、市役所3階のカウンセリング室にやってくる。コーラス部でのNコン出場がなくなり、将来の夢も失った高校生、看護師であるせいで婚約破棄された29歳男性、一人で子供を出産し子育てに追われる38歳女性、ネカフェ生活から路上生活になった46歳男性、オンライン授業で友達が増えない19歳男性。最後に真実が明かされる辻堂さんらしいトリックもあり。生きづらさを感じる皆にコロナ禍の辛さを思い出すも、希望の見えるラストに温かい気持ちになる。高校生のお守りが人の手を渡って人を繋ぐのも良かった。2025/04/23