内容説明
都会の片隅で人目を忍んでひっそりと暮らすひとりの女。何かから逃れるように、誰にも気づかれないように、孤独で単調な日々を送る。パチンコ景品交換所、連れ込み宿の清掃、惣菜店の裏方、訪問介護の現場。自宅も仕事も転々とするのは何か理由があるらしい。実は彼女にも、かつて幸せな暮らしがあった。仲のよい友人、家族との時間。充実した日々は、ある違和感から少しずつ壊れていく。そして、ついにある事件を発端に、彼女の人生は破滅する―。秘密を抱えた女が決意する、愛憎の果てにあるものとは。
著者等紹介
桂望実[カツラノゾミ]
1965年東京都生まれ。会社員、フリーライターを経て、2003年『死日記』でエクスナレッジ「作家への道!」優秀賞を受賞しデビュー。映画化された『県庁の星』『嫌な女』、ドラマ化された『恋愛検定』のほか、話題となった著作が多数ある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
211
産んでごめん。育ててごめん。だがこれは母親が背負わなければならない罪だろうか。そこにあるのは絶望。我が子から逃げたい母なんて・・と思うのはしんど過ぎる。どんなに更生したように見せても母の目は欺けない。分かっているのよ・・狡猾な人間はいるのだ。我が子だけは違うと思うのは偽善だ。私も息をつめて最後まで読んだ。このラストを私は支持したい・・2022/12/14
モルク
156
51才一人ワンルームで暮らす麻理。素性がばれそうになると仕事を辞め住居も転々とする。彼女は何から逃れているのかわからない前半。いごごちのよかった仕事もずるずる続けているうちに遂に知られてしまいそこにもいられなくなった。そして遂に少年犯罪を犯したサイコパスの息子が刑期を終え帰ってくる。子供の頃から息子は普通ではないと思っていた。その時と現在が行き来する。罪を償っても世間は許してくれない。それよりも彼はちっとも変わっていなかった。いつまで親でなければならないのか。彼女の決断は理解できる。一気読み。2023/03/31
とん大西
133
責められる?責められようか。絶望を引きずりつつ失った歳月。人並みの暮らしとは何か。確実に存在していた幸せは、もう遠い。自らの人生を諦めたし捨てていた、麻里51才。が、更に奥からわきあがる絶望の兆し。赦さない人もいるだろう。いや、大多数の人が眉をひそめ、非難を浴びせるだろう。恐れながら迷いながら、許されていた呼吸。その果てに彼女が選んだ決着。幸せなどもう求めていない。うん、私もそうするかもしれない。ん…責められようか。2022/12/18
ベイマックス
127
色々な性格があり、色々な人生があるものだな。親の責任ってどこまでなのか。最後は息がつまりそうでした。麻里は麻里で幸せになればいいし、息子はどうなのかな。生涯、施設の方がいいのか、ある程度の年齢になって性格が変わって社会とかかわって行けた方が幸せなのか。2023/06/07
ゆみねこ
114
都会の片隅で職を変え住まいを転々とする麻里。彼女が何から逃れているかが明らかになり、その絶望感に心が痛む。人を操り意のままに使うひとり息子の岳、成長とともに明らかになる異常性に母である麻里が気付いても誰も受け止めてくれない。親を下りるという麻里の決断は間違っていない。2023/02/09