内容説明
日本と韓国のふたつの家族。その時どうしても子を欲しいと願い、切なる思いで飛びついた医療があった―。衝撃的な結末に心が震え涙があふれる著者最高傑作!
著者等紹介
谷村志穂[タニムラシホ]
1962年北海道札幌市生まれ。北海道大学農学部にて応用動物学を専攻。1990年ノンフィクション『結婚しないかもしれない症候群』がベストセラーとなる。1991年『アクアリウムの鯨』を発表し、小説家デビュー。紀行、エッセイ、訳書なども手掛ける。2003年北海道を舞台に描いた『海猫』で第10回島清恋愛文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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モルク
108
旅館の娘菜々子と韓国からの留学生ジヒョンは共に医学部四年生。菜々子は両親と血液型が合わないことを知り実習でDNA検査をし、実子でないことを知る。両親は知っていたのか。それで愛されていなかったのか。菜々子とジヒョンが同じ産院で生まれそこは体外受精の先駆的な所だった。果たして…親子とは、子供の誕生とは受精し胚になった時なのかそれとも出産の時なのか。たとえ血は繋がっていなくても母のお腹の中にへその緒でつながり十月十日いたという事実、そこに愛がないとは言わせない!2023/04/17
いたろう
75
神奈川県にある医科大学の4年に、韓国からの留学生として来た女子学生ジヒョンが、真っ先に友人となったのは、同じく4年生の菜々子だった。幼い頃、日本に住んでいたジヒョンが、幼稚園でいつも一緒にいた初恋の相手、タケルを探すのに協力する菜々子とその恋人の謙太だったが、そんな菜々子が、医大生だからこそ、自分で知りえた自分の出生の秘密とは。これは、決してありえない話ではない。日本と韓国、2つの国にまたがる展開が、物語のスケールをまた大きくする。彼女たちが、この後どんな医者になり、どんな人生を歩むのかも気になるところ。2023/01/08
ぽてち
38
あれれ、谷村さん初読みかもしれない(・・;)。プロローグで描かれる1996年夏の情景から、本書の行方がわかったつもりで読んでいた。まあ、大筋では想像通りだったのだが、そこまで安易な作品ではないのでご安心を。というか、こんなバレバレなプロットだけで引っ張るはずもなく(もちろん菜々子が真相を探る過程はドキドキなんだが)、むしろ真相がわかってからの主人公たちの行動が主眼なんだと思う。それまでの友情物語や家族関係も読みどころだ。1点だけ、非常に大きな疑問があるが、医療監修者もおられるし、ぼくの無知ゆえなのだろう。2023/01/04
TAKA
28
成人を過ぎてから知った自分の出生の秘密と親との関係。その内容にショックを受けながらも必死に前を向こうとする菜々子が逞しく素敵だった。そこに寄り添うジヒョンや謙太との関係性も良かった。重いテーマなのに登場人物たちが魅力的で読みやすかった。ただ産婦人科医院の対応の悪さに憤りを感じ、そして張本人の謝罪の言葉が軽すぎる。自分は創造主であるという誤った認識を、誇りのように語る様子に恐怖や憐れみを感じた。2023/01/24
それいゆ
24
受精卵の取り違え、それが明らかになってからの家族の苦悩の話ですが、それだけに400ページを費やしており、片方の家族が韓国人だという話が加わって複雑になっていますが、なぜ韓国が出てくるの?といった感もあってじっくりと読み進めることがでず、あらすじを追っただけのようになりました。不妊治療のことを考えさせてくれるいい作品ですが、深刻さはあまり伝わってこず、取り違えだけがクローズアップされているような感じがしました。還暦過ぎてから生みの親を探している人のニュースを聞いたのを思い出しました。2022/12/08