内容説明
台北の女子高に入学した「私」は、先輩の小游と惹かれ合い、戸惑いながらも付き合うことに。しかし、小游には親の無理解で入院させられていた元恋人・小莫がいた。台湾大学に合格した小游と小莫は、大学近くのアパートで同居を始める。一年後、「私」も台湾大学に合格するが、二人とは距離を取ってしまう。大学を卒業した小游と小莫は渡米し大学院へ。翌年卒業した「私」は台北で会社員になる。時は流れ数年後、小莫から国際電話で「心臓の手術をするため帰国する」と連絡があり…。今を生きる少女たちの揺れ動く青春の日々を、繊細かつ誠実に描き出した傑作。
著者等紹介
李屏瑤[リヘイヨウ]
リー・ピンヤオ。1984年、台湾生まれ。小説家、劇作家、ライター。台湾大学中国文学科卒業。台北藝術大學戯曲藝術創作研究科修了。2016年に本作『向日性植物』で作家デビュー
李琴峰[リコトミ]
1989年、台湾生まれ。作家・翻訳家。2013年来日。2015年、早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程修了。2017年『独り舞』で第60回群臓新人文学賞優秀作を受賞。2021年『ポラリスが降り注ぐ夜』で第17回芸術選奨文部科学大臣新人賞、『彼岸花が咲く島』で第165回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
107
台湾のレズビアン小説。台湾で2016年に独立系出版社から刊行され、1万冊を超える売れ行きとなった。主人公が高校生の頃、先輩・学姐と恋に落ちた。しかし台湾大学に入学した小莫と学姐が付き合うようになり、私も違う彼女と付き合い始める。社会人になり、数年して学姐から小莫が入院したことを知らされる。遠周りをしてラストに学姐とまた巡り合うことに。90年代の台湾ではレズビアンは自死と結びつけられていた。2019年アジアで初めて同性婚法制化が実現するまで、著者もまた何度も街に出てデモに参加した。訳は芥川賞作家・李琴峰氏。2022/12/11
松本直哉
28
生きるには醜悪すぎるが、死ぬには美しすぎるこの世界で生き延びるために、小さな希望の光を求める向日性植物のような女性たちの物語は、卒業式で第二ボタンをやり取りして終りの一過性の熱病ではなく、大学のレズビアンサークルやパレードへの参加を通じて深められ、別れと再会を繰り返しつつ更新されてゆく。プールで制服がびしょ濡れになったときに先輩の制服を借りて彼女の匂いに包まれる場面が印象的。日本と台湾のレズビアン文学に精通した訳者の解説はすぐれた比較文学論になっている。この世界の本質に適合しない、それでも生きる決意の潔さ2022/12/16
あんこ
22
「物語は当然、高校生活から始まる。」-序盤に出てくるこの一文、そして主人公の名前が明かされず、一人称と二人称の織りまぜられた文章に、烏滸がましくも私の、そして大勢の誰かのための物語なのだと思った。とにかく和訳が美しくて、湖面の水の揺蕩う様を眺めている気分になった。思い出は脆く鮮烈で、時間が過ぎたり悲しいことがあろうが生活は続いていくように、この中に出てくる登場人物たちは、物語を(消費されるために)与えられているのではなく、しっかり息をしているように感じた。作者と訳者のあとがきもおもしろくて、大満足の一冊。2026/03/28
PAO
21
「まず唇を尖らせ、これからキスをするというふうに、学(シュエ)、と発音する」…全編が恋愛の恍惚感と戸惑いに溢れた溜息の様な私的で詩的な一冊。主人公に作者の屏瑶さん、《学祖》に訳者の琴峰さん、二人の李さんの面影を勝手に思い浮かべながら巧みな言葉で綴られる美しく切ない愛の世界にゆっくりと酔いました。琴峰さんがあとがきで触れている綿矢りささんの『生のみ生きのままで』が愛した人が女性だった女性の開かれた物語とすれば、本作は女性しか愛せない女性の閉じられた詞華集と言えるでしょう。どちらも私にとって愛すべき作品です。2022/09/28
いちろく
20
紹介していただいた本。台湾の女子校における女の子たちの恋愛事情から始まる物語。翻訳者が、李琴峰氏であったことから手にした一冊。先進的なイメージがある台湾でも、20年前では……と記載がある本書やあとがきからも想するに価値観の大きな変化があったのは近年。作品のジャンルをカテゴライズする時のレッテルに関して、諸刃の剣と述べつつも有用性を説き本書を「レズビアン小説」と記した著者や訳者の意志は重い。確かにカテゴライズすることで伝わることもあり、この件で他人がとやかく言うのはお門違い。訳者あとがきも含めて良かった。2024/01/13




