出版社内容情報
直木賞作家が『方丈記』『平家物語』を大胆にアレンジし、平安鎌倉の世を揺るがせた疫病、地震、戦争を新たな視点で描く。
内容説明
廂の下、猫と身を寄せ合い暮らす青年、自らを“喰い残し”と名乗る顔の抉れた女、影のない美しき三姉妹の尼―源平合戦の片隅で、長明の胸に小さな火を灯し、消えていった忘れがたき人々。八百年の時を超え、今、私たちの心を震わせる、儚く切ない物語集。
著者等紹介
朱川湊人[シュカワミナト]
1963年、大阪府生まれ。慶應義塾大学文学部国文科卒業。出版社勤務を経て、2002年「フクロウ男」でオール読物推理小説新人賞を受賞しデビュー。’03年「白い部屋で月の歌を」で日本ホラー小説大賞短編賞受賞。初の著書『都市伝説セピア』が直木賞候補、’05年『花まんま』で直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
102
朱川さんの不らぬ火文庫の第三作目で今回は、鴨長明の「方丈記」と「平家物語」が中心となっています。初めの方は若い鴨長明が主に語り手で、その周りにいる人物なども存在感があるように描かれています。ただやはり長生きはしないでいなくなってしまうので長明の心に無常という感じがあふれてくるのでしょう。平家物語の部分も同じような感じで平家の没落があってそこも第三者の立場で眺めていたと思われます。2022/11/05
ひらちゃん
74
「平家物語」は読んだことがある。この中では鴨長明が見た世の移り変りを泡沫になぞらえる。「方丈記」からもひも解いているようだ。壊れゆく都で出会った人が儚くも尊い。今の世が続くことなんて夢なんじゃないか。浮き沈みは昔も今も変わらないし。天災あり、戦あり、病あり。こんな世の中で人なんてちっぽけだ。吹けば飛ぶような小さい存在だ。だけど愛おしい存在でもあるよな。2022/07/13
ヒデミン@もも
55
やはり平家物語より方丈記の方が好き。この物語は、両者をミックスして書かれているものもあり朱川さんの才能が光る。方丈記には人の世は水の泡のようにはかなく変化してやまない云々とある。確かに平安から鎌倉と時代は変わった。そして、長い年月を経て令和。帯にあるように疫病、地震、そして戦争。変わらない世もある。そして、人も。人間って愚かだが憎めない。冒頭と最終話に出てきた猫丸の存在が愛おしい。2022/07/10
ポチ
52
方丈記と平家物語を基に平安時代末期の市井の人々を描く。虚しさや儚さが鴨長明を通して描かれている。この作品も良いのだが、不思議感のある作品が好きです。2022/07/30
けいぴ
50
「知らぬ火文庫」シリーズ3冊目読了。鴨長明の視点から見た平氏の栄枯盛衰と地下人たちの暮らし。諸行無常なり。2022/09/04