出版社内容情報
東日本大震災の最中、NPO法人の代表が復興支援金を使い込む横領疑惑が発覚。10年後、一人の少女から事件は再び動き始める。
内容説明
東日本大震災で被災した三陸沖の有人島、天ノ島に現れた、NPO法人「ウォーターヒューマン」代表、遠田政吉。「復興のカリスマ」と豪語する彼は、見捨てられた島に支援隊を立ち上げ、救世主として君臨するが、復興支援金四億二千万円の横領疑惑が発覚する。島を復活させるための命の金が、たったひとりの男の私利私欲のために溶けて消えてしまったのだ。地元出身の新聞記者、菊池一朗は、島を冒涜した遠田の罪を追い、得体の知れない詐欺事件の解明に奔走する。
著者等紹介
染井為人[ソメイタメヒト]
1983年千葉県生まれ。芸能プロダクションにて、マネージャーや舞台などのプロデューサーを務める。2017年『悪い夏』で横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しデビュー。話題作『正体』は、読書メーター注目本ランキング1位を獲得し、映像化も決まる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
231
あの時、誰かに何かに縋ってしまうよね。あの後の混乱に何をどうすれば良かったのか・・今なら何とでも言えるよね。が、どうしたって騙した方が悪いに決まってる。震災から10年、三陸沖の天ノ島であの日生まれた千田来未が浜辺で拾ったアタッシュケースには金塊が入っていた。そこから始まる物語。震災直後の被災地と人々のあれからが苦しさを際立たせる。復興支援金横領事件の顛末をこんな形で読ませる染井さんが酷い(褒めてます)悪党は痛みや弱みに付け込んでスルリと忍び寄るから注意して!しんどい読書だったがエピローグに救われた。2021/11/11
nobby
206
絶望に打ちひしがれし弱き心に付け入る悪党…災厄あれば必ず耳にする様な企みを、基とされた事件を重ねて痛々しく読んだ…東日本大震災からの復興へと鼓舞するええカッコの傍らで私欲を肥やす幼稚さが何とも歯痒い…表舞台に立ちたい悪とはどれだけタチが悪いのか…震災の日に生まれた10才の少女が海辺で見つけた金塊の詰まったカバン。そのプロローグから、被災直後と横領発覚後・現在の3つの時系列が入り組みながらも見事に繋がる展開が絶妙!思わず目を背けたくなる事象に葛藤繰り返しながら、最後に優しさと明るさ魅せてくれるのは『海神』。2021/12/25
fwhd8325
197
なんともやるせない気持ちです。あの震災を利用した事例は沢山あるのだろうけれど、本当にひどいとしか言葉がありません。参考文献の何冊かを読んでいるので、この箇所は参考にされているなとわかります。染井さんはそうした文献を巧く取り入れて骨太な作品を作り上げたと思います。2021/12/26
美紀ちゃん
194
あれ?これ、なんのカラクリ? 悪い人の正体を無口な江村くんは知っていた。 アレキシサイミア→失感情症。 嬉しいのか?悲しいのか?訊ねてもそれを表情に出したり言葉にすることができない。 江村くん。どうして? 姫乃はずっと思っていたけど、なぜかいつも、きちんと聞けずに諦めてしまう。 でも、信頼し合えて良かった。 ラストのあのシーンで、ボートが揺れて、?ってなった時、地震を起こしたのは海神だったということかな? 天の島と本土に橋がかかるといいなぁ。 映画になりそう。2021/12/08
モルク
193
震災後の復興支援に名を借りた詐欺。NPO法人代表の遠田は三陸沖の天の島に救世主の如く現れた。支援隊を立ち上げ采配を奮い島民たちの信頼を集めるが…復興支援金を私利私欲に使っていた。震災直後、疑惑が発覚した2年後、そして真実が見えてくる10年後の3つの時期が前後しながら進む。遠田の中の自己愛と自己陶酔による自信に満ちたカリスマ性は人の弱味につけこみ弱者を食い物にする。物語が佳境に差し掛かった昨夜大きな地震が!恐怖に震えながら、遠田のような男に頼らざるを得なかった島民たちも理解できる。憤懣やるかたないが…。2022/03/17