出版社内容情報
受験戦争を舞台に、子を愛しつつも過度に期待してしまう親の揺れ動く心情をあますところなく描いた衝撃作。凄絶な家族小説。
内容説明
専業主婦、有泉円佳の息子、翼は、小学二年生。興味本位で進学塾の全国テストを受け、中学受験に挑戦することになる。最大手の進学塾「エイチ」に入った翼は、男子四天王といわれる難関校を狙う。中高一貫校を受験した経験のある夫真治と、それを導いた義父母。中学受験にまったく縁のなかった円佳が、塾に、ライバルに、保護者たちに振り回され、世間の噂に、家族に、そして自分自身のプライドに絡め取られていく―。過熱する親の心情を余すところなく描いた、凄まじき家族小説。
著者等紹介
朝比奈あすか[アサヒナアスカ]
1976年東京都生まれ。2000年、大伯母の戦争経験を記録したノンフィクション『光さす故郷へ』発表。2006年「憂鬱なハスビーン」で第49回群像新人文学賞を受賞して小説家デビュー。子どもの生きづらさに寄り添う作品は中学校の試験問題に出題されることが多く、国語入試頻出作家と呼ばれる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fwhd8325
178
物語の舞台となる環境下の経験がないので、よくわかりませんが、通勤電車で、私立小学校、中学校へ通学する子どもたちを見ていると、苦しそうに見えることがあります。親のエゴの犠牲になっているんじゃないかと考えます。この物語も息苦しく感じました。ただ、後半になり親も子も自らの意思を取り戻すあたりでは、本を持つ手に力が入り涙を堪えていました。2022/07/30
eiro
156
たとえ合格してもだ。やっぱり虐待だと思う。よく自分の子どもにあんな苦行を強いるものだ。とにかく母親の虚栄心が最悪だ。テレビドラマや漫画の2月の勝者なんてものじゃない。現実はもっと狂気に満ち、壊された子どもも大勢いるのだろうな。田舎じゃあ全く縁のない話。あんな洗礼を受けた人たちが、やはり日本を動かしていく人たちの一部になるわけで、背筋が凍る、というのは言い過ぎか。昔より中学受験をする子ども、親、学校が増えたというのがびっくりだった。読んでて、大昔の漫画弓月光さんの「エリート協奏曲」を思い出した。2021/12/09
納間田 圭
114
やってみて大変ならやめればいいって…翼くんと両親の中学受験の話し。小学二年の時に軽い気持ちで始めたのが…思った以上にいい感触。しかし…そんなに甘くはなかった。身につまさせる展開。平凡な自分達の子供なのに…”とんびが鷹を産んだ”と勘違いする…親心。子供の将来の選択肢を増やしてあげたいと思う…親心。環境さえ良くなれば成績が上がると信じる…親心。中学受験は学年が上がるほど…比例して掛かる費用が増えてくる。ますます離脱できなくなる。だから…もう引き返せない。可哀想なのは…親に褒めてもらいたいとズルまで犯す…子供心2025/03/20
sayuri
109
正に凄絶な家族小説。自分は親から勉強しろと一度も言われた経験がなく、自分の息子にもそれを通したのでこんな世界がある事に驚愕する。僅か八歳で名門塾に通い、難関中学合格を目指す親子の戦いが描かれる。受験戦争とは良くいったもので、その様子は本当に戦争の様だ。塾の成績によるクラス分けに一喜一憂し、余所の子と比較し、親の虚栄心を満たす為の物となる。一体誰の為の何の為の受験なのか。戦いの渦の中で大切な事を見失っていく両親に歯がゆい思いだ。子の心を壊してまで得られる物に価値はない。ラスト一頁でようやく胸を撫で下ろした。2021/10/15
もっぱら有隣堂と啓文堂
106
出てすぐを古本で。「二月の勝者」と同じテーマ。どんより重い。溜息しか出ない。が、よく分かる。翼の気持ち、両親が息子にどうしても期待してしまう気持ち。算数が苦手な子がなんとかして現実から逃避したいときの手法のリアル、親の気持ちがジェットコースターのように激しく左右に振られ、短期間に乱高下するリアル。一連の心理を文章化するとこうなるんだな(できる子は違うが)。結局、受験は本人のためでなければならず、親が見栄を張るためであったり、ハラスメントがあったりしてはならない。有泉一家がそのことに気づけて本当に良かった。2021/10/02
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