出版社内容情報
名探偵・南美希風が、本家クイーン以上にタイトルに忠実な「国名シリーズ」挑む、注目のプロジェクト、第二弾。
内容説明
犯人は、報復する者であり、破壊者です。かつて心臓移植を経験している南美希風と、その移植手術を執刀した医師の娘であるエリザベス・キッドリッジ。ふたりにとって縁の深い篤志家の安堂朱海の訃報が届いた。高齢で長く闘病していた彼女だったが、自殺あるいは他殺の疑いが浮上する。誰が、何のために?弔意のために安堂家を訪れた美希風たちは、奇妙な因習、複雑な人間関係、そして未解決のままの悲劇の存在を知る―。精緻にして過剰な論理的推理が辿りついた、驚くべき真相とは!?
著者等紹介
柄刀一[ツカトウハジメ]
1959年北海道生まれ。1994年、鮎川哲也編『本格推理3』に「密室の矢」が初掲載。1998年、『3000年の密室』で長編デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雪紫
58
「ギリシャ棺」は未読(なお、表紙に納得。だが、初見はあの手に持ったやつヨードチンキに見えてしまった)。それゆえか、読んでて「Yの悲劇」を思い浮かべてた。信じる価値観やしきたりという己の道を貫く一族への怪事件。ラストは止まらないが時代錯誤と言うべき価値観とそれゆえに寄せ付けず否定する残酷さ、探偵の操りすら否定するずっしりとしたロジックと執念にはただ重い・・・。しかし、この趣向からすると解決はしたが信ずる平穏を破壊された安堂家はどうなってくのだろうか(慈善事業へのスタンスはその信念から変えたくないだろうが)?2023/06/03
ア・トイロッテ(マリポーサとも言う)(各短編の評価はコメントで)
24
★★★☆7 柄刀一の謎シリーズ二作目。この作家の書く文章にはいつも苦手意識あるのだが、ミステリーとしてはいつも良い内容を書いているので読み続けている。この作品がモチーフにしているのはクイーンの『ギリシャ棺の謎』であるとタイトルから窺えるし、内容もまたモチーフ元で重要な役割を果たした〇〇が共通している。本作では動機が現実離れしているために、柄刀一に物語のほうにも力を入れて読者である自分の気持ちを盛り上げてくれたらよかったのにと思ってしまった。もったいない部分はあるが、ミステリ面では満足したところの多い良作。2024/01/23
rosetta
20
★★★✩✩『エジプト十字架』に続く国名シリーズ。戦国時代末期に日本に漂着したギリシャ人の末裔の大富豪一族。長老の女性の死に殺人の疑いが。更には掘り起こされる四年前の孫娘の惨殺事件。 せっかくなんだから館の図面つけて欲しかったなぁ。 そんな動機でそんな事するかなぁ、という疑問は新本格に対しては持っても意味が無い。基本的にリーダビリティは悪くないのだが、解決編がやたらとダラダラ長ったらしいのは読んでいてツラい2021/07/15
みいやん
15
柄刀さんの国名シリーズ2作目で今回は長編。時系列では1作目の直後になる。複雑な謎解きはおもしろかったが、正直ちょっと疲れた。2021/04/21
engidaruma2006
13
柄刀一版「国名シリーズ」の第2弾。前作は短編集だったが、今作は書き下ろし長編。本家クイーンの国名シリーズでも「ギリシア棺の謎」が最長なので、それに敬意を表したのかな? 短編集ではローマ帽子やフランス白粉などに殆ど関係無い内容だったけれど、今作はギリシアにも棺にも関連があり、タイトルに偽り無しだった。 それはそれとして、今作は傑作。柄刀さんは数年置きに重厚な本格ミステリを発表するが、これが正にそれで、シリーズ探偵の南美希風が犯人当てと動機探しに挑む。複雑だが飛躍していないロジックが圧巻だった。面白かった。2021/03/23