出版社内容情報
充実感、達成感を実感したいとあがく30代半ばの女たちを描いた、角田光代の14年間埋もれていた傑作がついに光を浴びる。
内容説明
イラストレーター井出ちづる。夫は若い女と浮気をしている。嫉妬はまるで感じないがそんな自分に戸惑っている。早くに結婚して母となった岡野麻友美。自分ができなかったことを幼い娘に託し、人生を生き直そうとする。帰国子女で独身の草部伊都子。著名翻訳家の母のように非凡に生きたいと必死になるが、何ひとつうまくいかない。三人は女子高時代に少女バンドを組んでメジャーデビューをした。人生のピークは十代だったと懐かしむ。三十代となったこれからの人生に、あれ以上興奮することはあるのだろうか…。『対岸の彼女』直木賞受賞時に書かれた、女たちの物語。14年間埋もれていた傑作が、今、私たちの魂を揺さぶる。著者5年ぶりの長編小説。
著者等紹介
角田光代[カクタミツヨ]
1967年神奈川県生まれ。1990年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、『空中庭園』で婦人公論文芸賞、『対岸の彼女』で直木賞、『八日目の〓』で中央公論文芸賞、『紙の月』で柴田錬三郎賞など、著作、受賞作多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
386
角田 光代は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。著者久々バリバリの新作かと思いきや、15~17年前に書いて、著者が書いたことも忘れていた未単行本化の作品でした。元少女バンドの三人の20年後のリアル、三人共成長していない感じですが、読み応えがありました。 https://www.bookbang.jp/review/article/6519932020/12/23
さてさて
355
角田光代さんが”仕事場の大掃除”の中に偶然にも発見したことをきっかけに刊行されたこの作品。角田さんの作品の王道とも言える三十代の女性の葛藤と苦悩をテーマにしたこの作品。長い人生の中で『人生のピーク』と感じる時間は決して長くは続かないものです。しかし、そこからが本当の人生の始まりでもあります。きっとくる次のピーク、生きている限りきっと訪れる人生の新たな頂へ向けて苦悩の中にも一歩前に歩み出す主人公たち。そんな主人公たちに幸あれ!そんな風に感じた、角田さんの王道の作品らしさを強く感じさせる素晴らしい作品でした。2022/08/24
ウッディ
274
同級生でガールズバンドとして芸能デビューした三人。時は流れ、別々の人生を歩み、たまに食事をしながら、他の二人と自分を比べてしまう彼女たちの今を描いた物語、浮気する夫に嫉妬さえできないちづる、娘にかつての夢を託す麻友美、そして母の呪縛から逃れられない伊都子、イラストレーター、写真家、セレブママ、それぞれ目指すことで充足感が得られない彼女たちが本当に欲しかったのは、何かに向かって夢中になれる生き甲斐だったような気がする。ドロドロになりそうな一歩手前で踏みとどまり、迎えた結末は爽やかで、希望を感じさせた。2021/09/04
いつでも母さん
236
この3人の同級生(ちづる・麻友美・伊都子)15歳からの付き合いで今35歳。三者三様の気持の何処かにいつかの自分を見ては苦笑いの私…経てきた今だから「大丈夫よ。だいじょうぶ。」あの頃の私に言ってやりたい。ちっとも大丈夫なんかじゃなかったのに、それでも今ここにいる。「若かった」そんな言葉じゃ語れない友情や恋愛や日常…悔恨の情を偽善の衣を纏い出口の無い沼で独りもがいてた、あの頃のざらつく想いは今も苦いけれど、そんな日々さえ愛おしく懐かしい。彼女たちのその後を読んでみたいと思わせて角田さんが巧い。2020/12/15
のり
230
15歳の少女達が20年経っても連絡をとりあい、ちょくちょく会って近況を報告する三人組。結婚や出産等で彼女達を取り巻く環境は様々だが、思い遣る気持ちは変わりないが、隣の芝は青い現象も心の底にある。それぞれに言葉に出せない悩みがあるが…やっぱり男同士の付き合いより面倒事が多々あると思う。大変だ。一段上手く付き合い方をみつけ、あとがきに「角田」さんが言ってたように今なら50歳になっている彼女達。あれからどんな生き方をしてきたのか想像するだけで色んな意味で楽しい。2021/04/20