内容説明
恐怖、哀切、妖艶、感嘆―人の心は、鬼よりも不可思議で恐ろしい。鬼にまつわる説話を大胆に脚色した、奇想と怪異の短編集。
著者等紹介
朱川湊人[シュカワミナト]
1963年大阪府生まれ。慶應義塾大学文学部国文科卒業。出版社勤務を経て、2002年、「フクロウ男」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。’03年、「白い部屋で月の歌を」で日本ホラー小説大賞短編賞受賞。初の著書『都市伝説セピア』が直木賞候補、’05年、『花まんま』で直木賞受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
nobby
173
“鬼”とは何か?人より遥か大きな体躯に角を生やし、赤だの青だの色をして人を喰う暴虐な魔物に限らず幽霊や怨念といった怪異もひとまとめに称される便利使い…それ故に絶望や熱狂などから人道を外れた狂気が時に人を惑わせ鬼を生み、それと重ねて権力層は彼らを虐げる…そして人として生まれた者は人として生きる道を探し続け、鬼に成った者は鬼として死にゆく道しか許されず…まさに成らずに済むなら、それに越したことはない…今昔物語や御伽草子等を元にした鬼に纏わる8篇は、どれも鬼目線からの人間味溢れる訴えが何ともせつない…鬼哭啾々。2020/11/05
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
139
いつの世も"普通"から外れたものは生きにくい。鬼と呼ばれてはじき出された人だったものたちの悲しみが突き刺さってくる。見ためが人とちがう、一度失敗をおかしてしまう、純粋な思いがうまく伝わらない。世間に拒まれたひとたちはただ悲しんで、そしてそれでも生きる。 人は簡単に鬼に転じてしまうから、"少しでも人として生きる道を探し続けるのが、人として生まれた者の道であろう"。鬼は啾啾と哭く。2020/10/18
KAZOO
117
朱川さんは学生時代に日本文学の研究されていたとかで、このような作品は本領発揮ということなのでしょう。このシリーズ2作目で八つの短編が収められていて鬼が全体を通じてのモチーフとなっています。主に今昔物語からの作品をうまく脚色している気がします。夢枕さんの陰陽師に似たような話がある気がしますが、ここでは鬼は人間がつくりだしていくものということで一貫しているようです。2022/09/24
モルク
98
今昔物語の鬼にまつわる物語を朱川さん流に脚色した8話からなる短編集。とところどころ連作になっていて、これはあのときの…と、はっとさせられる。鬼として生まれたのか、それとも人間が怒り、憤りなどにより鬼に変化したものなのか。その存在は、赤鬼青鬼に代表されるような角があってシマシマパンツというものではない。げに恐ろしきは人間ということか。朱川さんには珍しくちょっとエロいところもある。でも、私はやっぱり昭和ノスタルジーの朱川作品の方が好きだけどな。2020/07/19
みかん🍊
93
平安京の古の時代、鬼とは人の心に棲む、切なくも哀しい鬼の8話の短編集、別の話かと思ったが繋がりがあった、女性蔑視、身分の低い者の命など枯葉の如くの扱い、今も昔もそれほども変わっていないのかもしれない、どれも哀しいかったが、犯した罪は決してなかったことにはならぬ「松原の鬼」が一番救われる話で好きだった。2020/05/13




