出版社内容情報
環境保護への意識が高まる昨今、社会問題化しつつある過剰採水の問題に真っ向から切り込む、骨太の社会派ミステリー!!
内容説明
八ヶ岳南麓の高原で暮らす都会からの移住者たち。ある朝、蛇口から流れる水が薄茶色に変じていた。それをきっかけに、当たり前だった日常が徐々に崩壊していく―。その日、彼らの生活から水が消えた。自然の中で生き続けて20年の著者だからこそ描けた、パニック・エンタテインメント×骨太の社会派小説!
著者等紹介
樋口明雄[ヒグチアキオ]
1960年山口県生まれ。雑誌記者、フリーライターなどを経て作家デビュー。南アルプス山麓に居を構え、執筆の日々を送っている。2008年、『約束の地』で第27回日本冒険小説協会大賞と、第12回大藪春彦賞をダブル受賞。13年、『ミッドナイト・ラン!』で第2回エキナカ書店大賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のっち♬
135
水企業の大量取水で生活を乱された秋津夫妻は、共闘を申し出る候補者に託す思いで市長選挙に入れ込む。水資源を取り巻く諸問題の提起が本書の眼目であり、エンターテイメントとしてはもの静かな印象。清二郎の神秘的な語りは著者の土地愛が滲み出ており、「見てくれをよくしてるがな。ちょっと入れば荒れ放題よ」という森林管理の実態は、拝金主義と悪しき制度が助長する社会の欺瞞と重なる。「目に見えない」からと言って「周囲にあるいろんなものの本当の価値」や「権利には義務が付随する」ことを忘れがちな現代人に闇と向き合う成長を促す一冊。2021/08/30
モルク
101
八ヶ岳の麓の別荘地に移住しログハウスでレストランを営む主人公秋津。井戸から汲んだ天然水を売りに順調に進んでいたが、ある日突然水が茶色に濁る。そしてついに井戸が枯れてしまう。水源豊かな地での水をめぐる企業や市長選が絡んだ政治家たちの思惑が渦巻き、地元民との軋轢もあり秋津たちも巻き込まれていく。水があるのが当たり前と思っていた。そして水に関する法改正が行われていたのに無関心で鈍感になっていた。私たちの大事な水が利権にまみれたり、ましてや海外特に中国資本で自由にされては堪らない。一滴の水から全てが始まる。2021/03/24
タイ子
96
舞台は八ヶ岳の麓。都会から移住してきて5年目、美味しい天然の井戸水で作るコーヒーと料理でレストランを経営する夫婦。他にも何組かの移住者たちがいる分譲住宅地の井戸水がある日突然濁り始め、ついに出なくなる。井戸水の枯渇を疑う原因は近くの飲料会社の過剰取水か。当たり前のように使っていた水は無限ではなかった。そんな折、市町選挙が始まり新市長に水問題を託すことにして応援を始める住民たち。資源の大切さ、何気に飲んでいる水、生命の始まりは一滴の水から。大事件は起こらないが、問いかけてくる内容は深くて重い。2020/02/17
ゆみねこ
93
八ヶ岳南麓の高原で暮らす都会からの移住者たち。ある日蛇口から流れる水に異変が。地下水を大量に汲み上げる巨大メーカー。かけがえのない水を巡る社会派エンタメ。2019/12/14
あすなろ
80
水はカネのあるところに流れるものである。正にブルーゴールドなのだ。ある日、家庭の蛇口から水が出なくなった。山梨八ヶ岳山麓を舞台に或る意味パニック小説とも取れる舞台設定で水や水源の社会的問題を上手く樋口氏は描いていると思う。水に関する重要な法改正がされているのにすごく皆が鈍感な気がしているのは僕だけか。一度、読みやすいこの作品で皆が考える時に来ているのかもしれない。2020/02/29